そこでこの記事では、理科の計算がキライな方でも理解できるよう、中1理科の化学分野『水溶液|質量パーセント濃度と溶解度』をまとめて解説します。
私が17年かけて培ってきた塾講師・教員経験を凝縮しました。計算問題を解くコツが知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
水溶液とは?|中1理科 化学
本章では、水溶液について、次の内容を解説します。
本章で学べる内容
- 水溶液の性質;「とける」の意味
- 水溶液の質量
- 溶質・溶媒・溶液のちがい
- 水溶液の例
- 水溶液の粒子モデル
【水溶液の性質】物質が水にとけるとは?
物質が水にとけると、とけた液は水溶液と呼ばれます。
物質がとけて水溶液になると、次の3つの性質を示します。
水溶液の性質
- 透明
- 濃さが均一
- 時間がたっても濃さは変わらない
水溶液の質量は溶媒+溶質
溶質の質量と溶媒の質量を合わせると、水溶液の質量になります。
溶質(g)+溶媒(g)=水溶液(g)
溶質は溶媒にとかすと、目に見えなくなりますが、消えてなくなるわけではありません。
溶質+溶媒=水溶液だから
20g+80g=100g
(答え)硫酸銅水溶液の質量は100g
溶質・溶媒・溶液のちがい
水溶液において、覚えてほしい用語を紹介します。
水溶液の理科用語
- 溶質…液体にとけている物質
- 溶媒…溶質をとかしている液体
- 溶液…溶質が溶媒にとけた液
→水溶液…溶媒が水の溶液
→エタノール溶液…溶媒がエタノールの溶液
水溶液の例(中学理科)
中学理科でよく出る水溶液の名前と、溶けている溶質、溶媒は次のとおりです。
溶質 | 溶媒 | 溶液 |
砂糖 | 水 | 砂糖水 |
食塩 | 水 | 食塩水 |
塩化ナトリウム | 水 | 塩化ナトリウム水溶液 |
硫酸銅 | 水 | 硫酸銅水溶液 |
塩化銅 | 水 | 塩化銅水溶液 |
アンモニア | 水 | アンモニア水 |
塩化水素 | 水 | 塩酸 |
二酸化炭素 | 水 | 炭酸水 |
水溶液の粒子モデル
粒子とは物質をつくっている小さな粒のことです。
粒子は種類により質量が決まっています。金の粒子なら重く、水素の粒子なら軽いです。
溶質が溶媒にとけて水溶液になるようすを粒子モデルで表すと、次のようになります。
とけていないときは粒子が、底に沈んでいるのに対して、とけているときの粒子は一様に広がっていることが分かります。
粒子モデルから分かることは次のとおりです。
粒子モデル
- 粉末はとけると、小さく見えない粒子になる
- 粉末はとけると透明になるが、粒子がなくなる訳ではないため、質量は変わらない
水溶液の質量パーセント濃度|中1理科 化学
水溶液の濃さは質量パーセント濃度で表せます。本章では、質量パーセント濃度について、次の項目にそって解説します。
本章で学べる内容
- 質量パーセント濃度の単位
- 質量パーセント濃度の計算公式
- 質量パーセント濃度の計算方法
質量パーセント濃度の単位
質量パーセント濃度の単位は%です。パーセントと読みます。
質量パーセント濃度の計算公式
質量パーセント濃度の計算公式は、次のとおりです。
◆質量パーセント濃度の計算公式
質量パーセント濃度(%)=100×溶質(g)÷溶液(g)
溶液を溶媒と溶質に置き換えると、公式を次のように書き換えられます。
◆質量パーセント濃度の計算公式【溶媒版】
質量パーセント濃度(%)=100×溶質(g)÷〔溶質+溶媒〕(g)
質量パーセント濃度の計算方法
質量パーセント濃度の計算方法を、次の例題をもとに解説します。
◆質量パーセント濃度の計算公式
質量パーセント濃度(%)=100×溶質(g)÷溶液(g)
上記に、例題の条件を当てはめて考えます。
公式に代入する数字
- 砂糖は溶質だから、溶質が25
- 砂糖水が溶液だから、溶液は100+25=125
公式に上記の数字を入れると、
濃度=100×25÷125=20
(答え)20%
溶解度曲線の読み取り|中1理科 化学
本章では、溶解度曲線と飽和水溶液について、次の項目にそって解説します。
本章で学べる内容
- 飽和と飽和水溶液
- 溶解度と溶解度曲線
- 溶解度曲線の読み取り方・計算方法
- 結晶と再結晶
- 純物質と混合物
飽和と飽和水溶液
飽和とは、溶質が限度までとけている状態です。
飽和している水溶液は、飽和水溶液と言います。
過不足なく飽和している水溶液は、とけのこりなく、すべて溶けているため透明です。よって、ろ過では溶質をとり出せません。
ろ過によって取り出せるのは、とけずに残っている固体だけです。
溶解度と溶解度曲線
水100gにとかすことができる溶質の最大の質量を、溶解度と言います。
溶解度の単位はg(グラム)です。
溶解度には、次の2つの性質があります。
溶解度の性質
- 種類によって決まっている
- 水の温度によって変化する
溶解度は、物質の種類や水の温度によって変化するため、下のようにグラフで表すと見やすくなります。
上グラフのように、横軸に水の温度(℃)をとり、縦軸に溶解度(g)をとると、曲線ができます。この曲線グラフを溶解度曲線といいます。
硝酸カリウムの溶解度曲線は、曲線の曲がり方が急であり、食塩の溶解度曲線はほぼ直線のように見えます。
溶解度曲線の読み取り方・計算方法
上のような溶解度曲線を例に、溶解度曲線の読み取り方や計算方法について解説します。
溶解度曲線の読み取りのポイントは、次のとおりです。
- 溶解度曲線に棒グラフを書き込む
- 棒グラフが溶解度曲線以上なら飽和している
- 棒グラフが溶解度曲線より上なら「とけのこる」
- 棒グラフが溶解度曲線より下なら「すべてとける」
水の温度が20℃のとき、最大で約20gとける。
よって、物質を30gとかそうとしても、30-20=10gとけのこる
(答え)20gとけるが、10gとけのこる
水の温度が20℃のとき、最大で約20gとけるため、水に20g入れた物質は完全にとけきる。
水の温度が10℃のとき、最大で約15gだけとける。
20℃のとき20gとけていた物質は、10℃に冷えると15gしかとけることができなくなるため、
20ー15=5(g)が結晶として出てくる。
(答え)15gとけるが、5gが結晶として出てくる
水の温度が20℃のとき、最大で約20gとけるため、水に20g入れた物質は完全にとけきる。
水の温度が35℃のとき、最大で約30gとける。
20℃のとき20gとけていた物質は、35℃にあたためると30gとけることができるため、まだ30ー20=10(g)だけとかすことができる。
すなわち、この水溶液は飽和状態ではないと言える。
(答え)20gは完全にとけたが、あと10gとかすことができる。飽和していない。
結晶と再結晶
結晶とは、純粋な物質で規則正しい形の固体です。
再結晶は物質を溶媒にとかし、温度を下げたり、溶媒を蒸発させたりして、再び結晶としてとり出す操作のことを言います。
純物質と混合物
純物質とは、1種類の物質でできている純粋な物質のことです。
純物質の例
- 酸素
- 二酸化炭素
- 水
- エタノール
- 塩化ナトリウム
混合物とは、複数の純物質が混ざり合った物質です。
混合物の例
- 空気(窒素と酸素などの混合物)
- 海水(水と塩化ナトリウムなどの混合物)
- 炭酸水(水と二酸化炭素などの混合物)
- 石油
- 塩化ナトリウム水溶液(水と塩化ナトリウムの混合物)
液体から物質を取り出す方法|中1理科 化学
本章では、液体から物質をとり出す方法を、次の項目にそって解説します。
液体から物質をとり出す方法
- ろ過;混合物から取り出す
- 再結晶;水溶液を冷やして取り出す
- 再結晶;加熱して水を蒸発させて取り出す
【混合物をろ過する】混合物から物質を取り出す
ろ過では、ろ紙を使うことで、固体と液体を分けられます。
溶液から完全にとけている溶質を分けることはできません。
ろ過実験の注意点
ろ過実験の注意点は、次のとおりです。
ろ過実験の注意点
- 4つに折ったろ紙を水でぬらして、ろうとに密着させること
- ろうとのあしの切り口の長い方をビーカーにあてること
- ろ紙が重なっているところへあてたガラス棒を伝わらせて、液をそそぐこと
ろ過のよくある問題
答〕ろ過でとり出す
理由〕ろ紙のすきまより小さい水の粒子は通り抜けるが、ろ紙のすきまより大きいデンプンの粒子は通り抜けられないため。
【水溶液を冷やす】溶解度曲線の変化が大きい物質をとり出す
溶解度曲線の変化が大きい物質をとり出す方法は、水溶液を冷やすことです。
硝酸カリウムやミョウバンは、溶解度曲線の変化が大きいため、冷やすととけきれなくなった結晶が出てきます。
【水を蒸発させる】溶解度曲線の変化が小さい物質をとり出す
溶解度曲線の変化が小さい物質をとり出す方法は、水を加熱するなどして水を蒸発させることです。
塩化ナトリウムは、溶解度曲線の変化が小さいため、冷やしてもほとんど結晶は出てきません。そのため、水を蒸発させることで、物質をとり出します。
【まとめ】濃度と溶解度をノートに整理しよう|中1理科 化学
中1理科「水溶液の濃度と溶解度」について解説しました。
水溶液の性質や「とける」の理科的な意味については、下のようにまとめるといいでしょう。
水溶液と粒子モデルについては、下のまとめノートが参考になるでしょう。
水にとけなかった物質はろ過をするととり出せます。下のまとめノートのように整理すると分かりやすくなります。
水溶液の濃さは質量パーセント濃度で表します。下のまとめノートに考え方のキソをまとめました。
溶解度は、下のように飽和・飽和水溶液・溶解度曲線とまとめて理解すると、記憶にのこりやすいです。
溶解度曲線の読み取り方と、とけた物質をとり出す方法は、下のまとめノートが参考になります。
結晶と再結晶、純物質と混合物など、まぎらわしい理科用語は、整理してまとめると覚えやすいです。
以上、中1理科の化学分野「水溶液|質量パーセント濃度と溶解度」でした。
本解説が皆さんの理解のお役に立てると幸いです。