そこでこの記事では、理科の実験が苦手な方でも理解できるよう、中1理科の化学分野『状態変化』をまとめて解説します。
私が17年かけて培ってきた塾講師・教員経験を凝縮しました。状態変化を理解するコツが知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
物質の三態【固体・液体・気体】中1理科 化学
物質の三態とは、固体・液体・気体の3つの状態を指します。
本章では、物質の三態について、次の項目に沿って解説します。
本章で学べる内容
- 固体、液体、気体の違い
- 固体とは
- 液体とは
- 気体とは
固体、液体、気体の違い
固体、液体、気体のちがいをまとめると、下図のようになります。
固体とは
物質の三態のうち、最も温度が低い状態が固体です。
水における氷が固体です。
液体とは
物質の三態のうち、流れる性質をもち、決まった形をとらない状態が液体です。
水における水や湯は液体です。
液体は目で見えるため、実は湯気も液体です。
気体とは
物質の三態のうち、最も体積が大きい状態が気体です。
水における水蒸気が気体です。水蒸気は目に見えません。
天気予報でよく聞く湿度は、空気中に含まれる水蒸気の割合を示しています。
状態変化とは|中1理科 化学
物質が固体、液体、気体の間で状態を変えることを状態変化と言います。
本章では、上図にある6パターンの状態変化について解説します。
本章で学べる内容
- 固体から液体への変化;融解
- 液体から気体への変化;蒸発
- 固体から気体への変化;昇華
- 気体から液体への変化;凝縮
- 液体から固体への変化;凝固
- 気体から固体への変化;凝華
固体から液体への変化【融解】
固体を加熱すると、とけて液体になります。
このような状態の変化を、特に融解(ゆうかい)と言います。
液体から気体への変化【蒸発】
液体を加熱すると、沸騰して気体になります。
このような状態の変化を、特に蒸発(じょうはつ)と言います。
固体から気体への変化【昇華】
固体を加熱すると、直接気体になる物質があります。
このような状態の変化を、特に昇華(しょうか)と言います。
固体のドライアイスは、あたためると直接、気体の二酸化炭素に変化します。
気体から液体への変化【凝縮】
気体を冷却すると、液体になります。
このような状態の変化を、特に凝縮(ぎょうしゅく)と言います。
液体から固体への変化【凝固】
液体を冷却すると、かたまって固体になります。
このような状態の変化を、特に凝固(ぎょうこ)と言います。
気体から固体への変化【凝華】
気体を冷却すると、直接固体になる物質があります。
このような状態の変化を、特に凝華(ぎょうか)と言います。
気体の二酸化炭素は、冷やすと直接、固体のドライアイスに変化します。
状態変化と温度|中1理科 化学
状態変化は、主に温度の変化により生じる変化です。
本章では、状態変化における2つの温度について、次の項目で解説します。
本章で学べる内容
- 融点
- 沸点
- 純物質の融点・沸点の特徴
融点
固体がとけて液体に変化する温度を融点(ゆうてん)と言います。
融点は、物質によって決まっています。
水の融点は0℃、パルミチン酸の融点は63℃です。
沸点
液体が沸騰して気体に変化する温度を沸点(ふってん)と言います。
沸点は、物質によって決まっています。
水の沸点は100℃、エタノールの沸点は78℃です。
純物質の融点・沸点の特徴
ある純物質を加熱して固体から液体、気体へと状態変化させたときの、時間と温度をグラフにしたのが上図です。
純物質の融点と沸点の特徴は、次のとおりです。
純物質の融点と沸点
- 融点では固体と液体が混ざっている
- 沸点では液体と気体が混ざっている
- 状態変化しているときの温度は一定になる
状態変化と質量・体積|中1理科 化学
状態変化により体積が変化します。
質量は状態変化により変化しません。
本章では、状態変化と質量・体積の関係について解説します。
本章で学べる内容
- 物質の状態変化と質量・体積
- 【水は例外】水の状態変化と体積
- 状態変化と粒子モデル
物質の状態変化と質量・体積
状態変化と質量、体積の関係は、次のようにまとめられます。
状態変化と質量・体積
- 状態変化により質量は変化しない
- 気体になると体積が大きくなる
- 固体になると体積が小さくなる
【水は例外】水の状態変化と体積
水においては、固体の体積が液体の体積より大きくなります。
水以外の物質では、固体の体積は液体よりも小さいため、水は例外なのです。
状態変化と粒子モデル
固体、液体、気体の状態によって、物質の粒子のようすが異なります。
固体のとき、粒子は次のような特徴を示します。
固体のときの粒子のようす
- 粒子の運動はおだやか
- 粒子どうしの間隔はせまく、すきまがない
- 粒子はほとんど動かず、規則正しく並ぶ
気体のとき、粒子は次のような特徴を示します。
気体のときの粒子のようす
- 粒子の運動は激しい
- 粒子どうしの間隔は非常に広い
- 粒子は自由に飛び回る
固体、液体、気体と状態を変えても、粒子の数が変わらないと、質量は変わりません。
【実験】エタノールの沸騰エタノール入りの袋|中1理科 化学
エタノールを入れた袋に湯をかける実験を行うことで、液体から気体に状態変化するときの体積の変化を確かめられます。
本章では、次の内容について解説します。
本章で学べる内容
- エタノール入りの袋に湯をかける実験の手順
- エタノール入りの袋に湯をかける実験の結果
- エタノール入りの袋に湯をかける実験の考察
エタノール入りの袋に湯をかける実験の手順
エタノール入りの袋に湯をかける実験の手順は、次のとおりです。
エタノール入りの袋に湯をかける実験の手順
- ポリエチレンの袋にエタノールを入れ、口をとじる
- 袋に湯をかけ、エタノールをあたため、変化のようすを観察する
エタノール入りの袋に湯をかける実験の結果
エタノールが入った袋はふくらみます。
エタノール入りの袋に湯をかける実験の考察
エタノールが入った袋がふくらんだことから、液体のエタノールが気体になって体積が大きくなったと言えます。
粒子モデルで考えると、気体になって体積が大きくなる理由が次のように説明できます。
気体になると質量は変わらず体積が大きくなる理由
- 液体が気体になっても、粒子の数は変わらない=質量は変わらない
- 液体が気体になると、粒子と粒子の間隔が広がる=体積が大きくなる
【実験】エタノールの沸騰|中1理科 化学
本章ではエタノールの沸騰実験について解説します。
本章で解説する内容
- エタノール沸騰実験の手順
- エタノール沸騰実験の注意点
- エタノール沸騰実験の結果
- エタノール沸騰実験の考察
エタノール沸騰実験の手順
エタノール沸騰実験の手順は、次のとおりです。
エタノール沸騰実験の手順
- 枝つき試験管にエタノールと沸騰石を入れ、装置を組む
- ガスバーナーで加熱する
- 1分ごとにエタノールの温度をはかる
- 沸騰し始めた時間を記録する
エタノール沸騰実験の注意点
エタノール沸騰実験の注意点は、次のとおりです。
エタノール沸騰実験の注意点
- 直接ガスバーナーで加熱せず、湯に入れて加熱する
[理由]エタノールは引火しやすいため - 沸騰石を入れてから加熱する
[理由]液体が急に沸騰(突沸)するのを防ぐため - 火を消す前に、ガラス管の先を試験管にたまった液体から抜いておく
[理由]液体が逆流するのを防ぐため
エタノール沸騰実験の結果
1分ごとにはかった温度をグラフにすると、上記のような結果になります。
78℃で沸騰が始まると、温度が一定になっていることも分かります。
結果についてまとめると、
加熱する時間にともなって温度も上がるが、78℃から一定になっている
ということが分かります。
エタノール沸騰実験の考察
沸騰している間、78℃で温度が一定なので、エタノールの沸点は78℃だと分かります。
エタノールのような純物質は、状態変化しているときの温度が一定になるのです。
【実験】パルミチン酸の融解|中1理科 化学
本章ではパルミチン酸の融解実験について解説します。
本章で解説する内容
- パルミチン酸の性質
- パルミチン酸の融解実験の手順
- パルミチン酸の融解実験の注意点
- パルミチン酸の融解実験の結果
- パルミチン酸の融解実験の考察
パルミチン酸の性質
パルミチン酸は有機物の一種です。
食品においては、ラードやバターなどに含まれます。
また、石鹸(セッケン)や化粧品の原料にもなっています。
パルミチン酸の融解実験の手順
パルミチン酸の融解実験の手順は、次のとおりです。
パルミチン酸の融解実験の手順
- 図の装置を組む
- ガスバーナーで加熱する
- 1分ごとにパルミチン酸の温度をはかる
- とけ始めた時間を記録する
パルミチン酸の融解実験の注意点
パルミチン酸の融解実験の注意点は、次のとおりです。
パルミチン酸の融解実験の注意点
- 試験管のゴム栓に切り込みを入れておく
[理由]蒸気を出すため
パルミチン酸の融解実験の結果
1分ごとにはかった温度をグラフにすると、上記のような結果になります。
結果についてまとめると、
- 加熱する時間にともなって温度も上がるが、とけ始めた63℃から一定になっている
- すべての固体がとけ終わると温度が再び上がる
と、まとめられます。
【蒸留とは?】溶液から液体をとり出す
本章では蒸留について、次の項目にそって解説します。
本章で学べる内容
- 蒸留のしくみ
- 蒸留と温度変化グラフ
- 蒸留と純物質・混合物の関係
- 蒸留と再結晶のちがい
- 蒸留とろ過のちがい
蒸留のしくみ
蒸留とは、加熱して液体を沸騰させ、出てきた蒸気を冷やして、再び液体をとり出す操作です。
蒸留のしくみは、次のようにまとめられます。
蒸留のしくみ
- 液体を加熱する
- 気体に変化する
- 気体を冷却する
- 液体に変化する
料理しているときに、鍋などのフタに水滴がつくのは蒸留が原因です。
蒸留と温度変化グラフ
水とエタノールの混合物から、蒸留によってエタノールをとり出すときのグラフが上図です。
上のグラフから分かることは、次のことです。
混合物を蒸留するときの温度は、状態変化しているときに一定にならない
混合物に対して蒸留の操作をした場合、沸点の低いエタノールが先に沸騰を始め、気体に変化します。
異なる沸点をもつ液体どうしの混合物は、沸騰中に温度が一定にならないのです。
蒸留と純物質・混合物の関係
蒸留によって、混合物から純物質をとり出せます。
液体どうしの混合物は、ろ過や再結晶によって液体をとり出せません。
蒸留と再結晶のちがい
蒸留は混合物から液体をとり出す操作で、再結晶は水溶液から溶質を固体としてとり出す操作です。
蒸留は沸点のちがいを利用しているのに対し、再結晶は溶解度の温度によるちがいを利用しています。
蒸留も再結晶も加熱したあと冷却しているため、勘違いしやすいので注意しましょう。
蒸留とろ過のちがい
蒸留は混合物から液体をとり出す操作で、ろ過は混合物から液体と固体を分離する操作です。
再結晶の操作により溶液中に生じた結晶をとり出すときに、ろ過をよく用います。
【蒸留実験】エタノールと水の混合物の加熱|中1理科 化学
本章では、蒸留実験の代表例であるエタノールと水の加熱実験を解説します。
本章で学べる内容
- エタノールと水の混合物の加熱実験の手順
- エタノールと水の混合物の加熱実験の注意点
- エタノールと水の混合物の加熱実験の結果
- エタノールと水の混合物の加熱実験の考察
エタノールと水の混合物の加熱実験の手順
エタノールと水の混合物の加熱実験の手順は、次のとおりです。
エタノールと水の混合物の加熱実験の手順
- エタノールと水の混合物を枝つきフラスコに入れる
- 図のような装置を組み、混合物を加熱し、フラスコ内のようすを観察する
- 出てきた液体を順に3本の試験管に集め、加熱をやめる。
それぞれ何℃から何℃の間に集めたものかを記録しておく
エタノールと水の混合物の加熱実験の注意点
エタノールと水の混合物の加熱実験の注意点は、次のとおりです。
エタノールと水の混合物の加熱実験の注意点
- 温度計の液だめは枝の高さにする
[理由]出てくる蒸気の温度をはかるため - 火を消す前に、ガラス管の先を試験管にたまった液体から抜いておく
[理由]液体が逆流するのを防ぐため - ビーカーに氷水を入れる
[理由]出てきた気体を冷やして液体にするため
エタノールと水の混合物の加熱実験の結果
エタノールと水の混合物の加熱実験の結果は、次のとおりです。
エタノールと水の混合物の加熱実験の結果
- 加熱前と3本目の試験管には火がつかない
- 1本目と2本目の試験管には火がつく
エタノールと水の混合物の加熱実験の考察
エタノールと水の混合物の加熱実験の考察は、次のとおりです。
エタノールと水の混合物の加熱実験の考察
- 1本目と2本目の試験管の液体に火をつけると燃えたのは、エタノールが多く含まれているから。
→水よりも沸点の低いエタノールを多く含んだ気体が、先に出てくる - 3本目の試験管の液体に火がつかなかったのは、水が多く含まれているため。→水の沸点に近づき、水を多く含んだ気体が、後から出ることが分かる
状態変化と蒸留はまとめノートに整理すると理解できる
中1理科「状態変化と蒸留」について解説しました。
状態変化と質量、体積、粒子の関係について、次のノートのようにまとめるといいでしょう。
状態変化と体積の関係について、エタノール入りの袋に湯をかける実験を例にまとめたのが下図です。
状態変化と温度(沸点や融点)について、下のノートのようにグラフや図を用いると理解しやすいです。
エタノールの沸騰実験について、次のようにまとめるといいでしょう。
パルミチン酸やメントールの融解実験については、次のように実験装置図と結果のグラフをノートに書くと、理解しやすくなります。
蒸留のしくみについては、次のノートを参考にしてください。
水とエタノールの混合物の加熱実験については、次のようにノートにまとめて、しっかり内容を理解してください。
以上、中1理科の化学分野「状態変化と蒸留」でした。