この実験では、細胞分裂をするときの細胞の変化を詳しく観察します。
具体的には、タマネギの根の先端にある、分裂中の細胞の染色体の形や位置を顕微鏡で観察し、細胞分裂がどのような順序で進むのかを調べることが目的です 。
私たちの体の細胞の中には核があり、その核の中には染色体という、遺伝情報を持つひものようなものが存在します。
根の先端にある成長点と呼ばれる場所の細胞は、活発に細胞分裂を行っているため、この染色体を観察するのに適しています。
それでは、実験の詳しい内容を見ていきましょう。
1.実験に用いる薬品|体細胞分裂の観察
体細胞分裂の観察実験で使用する主な薬品は次の2つです。
- 塩酸
- 染色液(酢酸オルセイン溶液、または酢酸カーミン溶液、酢酸ダーリア溶液)
2.実験の手順|体細胞分裂の観察
体細胞分裂の観察実験の手順は、主に次のとおりです。
実験手順 :
- 根の先端を切り、塩酸(※1)を1滴落とす。 その後、ろ紙で塩酸をじゅうぶんに吸い取る。
- 染色液(※2)を1滴落とす。
- カバーガラスをかけ、その上をろ紙でおおい、指やつまようじでゆっくりと根を押しつぶす(※3)。
- 低倍率から観察をはじめ、核が多い部分をさがす。さらに高倍率にかえて、核や染色のようすをくわしく観察し、スケッチする。
実験の手順に関するポイント
- ※1. 塩酸の役割:
細胞壁どうしを結びつけている物質をとかし、細胞を1つ1つ離れやすくするために使う。観察しやすくなる。細胞を生きていた時の状態で固定する効果もある。 - ※2. 染色液の役割:
細胞の核(染色体)を染めるはたらきがある。 - ※3. 押しつぶす操作: カバーガラスの上から指でゆっくりと根を押しつぶすことで、細胞どうしが分離し、重なりが少なくなるため、個々の細胞や染色体を観察しやすくなる。
- 安全上の注意:
薬品が手についた場合は、すぐに多量の水で洗い流す。目に薬品が入らないように、必ず保護眼鏡をかける。
3.実験の結果|体細胞分裂の観察
体細胞分裂の観察では、次のような結果が得られます。
- 丸い核が見られる細胞があったり、ひものようなものが見られる細胞があったりした 。
- 根の先端に近い部分、特に成長点付近では、異なるようすの染色体をもつ細胞が多数見られた。
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成長点と根冠”]
根の先端近くで細胞分裂がさかんに行われている部分を成長点といいます。
根が土の中を伸びていく際に、この成長点が傷つかないように、根の先端には根冠というぼうしのような構造があります。
4.実験の考察|体細胞分裂の観察
体細胞分裂の観察実験の結果からつぎの2点について考えることができます。
- 染色体のようすが異なる細胞が見られたことから、細胞分裂が行われていることが分かる。
- 細胞の形や染色体の形・位置などから、細胞分裂の順序を推測できる。
推測できる細胞分裂の順序は、次のとおりです。
- 分裂がはじまる前の細胞には、1つの核が見られる。
- 分裂がはじまると、核の形が見えなくなり、ひものような染色体が見えるようになる。
- 染色体が細胞の中央にきれいに並んだ後、それぞれの染色体が2つに分かれて、細胞の両端に移動する。
- その後、細胞質も2つに分かれはじめる。染色体は見えなくなり、再び核の形が見えるようになり、最終的に2つの新しい細胞ができる。
実験の振り返りレポート例|体細胞分裂の観察
実験後のレポート作成では、次のような振り返りの例を参考に、自分なりの気づきや疑問点をまとめるといいでしょう。
- 今回の観察で、たくさん見つかった染色体の形と、あまり見られなかった染色体の形に違いがあったのが不思議でした 。
- 細胞分裂にはどれくらいの時間がかかるのか、そして染色体が細胞の中で動くのはどういう仕組みなのか、もっと知りたいと思いました 。
- 顕微鏡で細胞が分裂していく様子を実際に観察できたことに感動しました。教科書で見た図が、本当に起きていることだと実感できました。
- 根の先端を押しつぶす作業が難しく、細胞が重なってしまって観察しにくい部分がありました。もっときれいにプレパラートを作る練習が必要だと感じました。
- 観察した細胞の中には、分裂の途中のさまざまな段階のものが混じっていて、細胞分裂が常に進んでいることがわかりました。次に観察する機会があったら、それぞれの段階の細胞をもっと詳しくスケッチしてみたいです。
- 今回の実験を通して、目に見えない小さな細胞の中で、こんなに複雑な変化が起きていることに驚きました。生命の神秘を感じることができた実験でした。