中学理科の現役教員けいが「中2理科の生物分野-消化と吸収のしくみとはたらき–」を、誰にとっても分かりやすく解説します。
この記事を読むと、テストに出る問題を意識してつくられた最強のまとめノートにそって学習できるため、消化酵素がかんたんに覚えられるようになります。
私が17年かけて培ってきた塾講師・教員経験を凝縮しました。理科を理解したい熱意のある方はぜひご活用ください。
消化のしくみ|中2理科 生物
消化とは、次のようなはたらきを言います。
消化
栄養分を分解して、吸収されやすくするはたらき
食物に含まれている炭水化物やタンパク質、脂肪などの栄養分は、大きすぎて体に吸収できないため、消化する必要があるのです。
本章では、消化に関する次の3点を詳しく解説します。
【本章で学べる内容】
- 食べ物の栄養分と消化
- 消化管と消化系
- 消化液
食べ物の栄養分と消化
中学理科において、食物は次の2つに分けられます。
食物(栄養分)の分類
- 有機物
- 無機物
有機物は、さらに次の3つに分けられます。
有機物の食物をさらに分類
- 炭水化物 ;デンプン、米
- 脂肪 ;油
- タンパク質;肉
上記のうち、炭水化物と脂肪は生きるためのエネルギー源となり、細胞呼吸につかわれます。
タンパク質は体をつくる材料につかわれます。
食物となる無機物には、塩化ナトリウムやカルシウムなどがあり、体の調子をととのえるはたらきがあります。
ナトリウムは血液の材料になり、カルシウムは骨の材料になります。
有機物や無機物の分類は、中学1年で次のように学習しました。
有機物
- 炭素(と水素)を含む
- 燃えると、二酸化炭素(と水)を発生する
- 砂糖、かたくり粉、プラスチックなど
無機物
- 加熱しても燃えない。または、燃えても二酸化炭素を発生しない
- 食塩、金属、炭素、二酸化炭素など
ちなみに、家庭科における三大栄養素とは、次の3つです。
- 糖質(≒炭水化物)
- 脂質(=脂肪)
- 蛋白質
家庭科の五大栄養素とは、上の3つに、下記2つを加えたものを指します。
- ビタミン
- ミネラル(=無機質)
※理科的にはビタミンは有機物、ミネラルは無機物
消化管・消化液・消化系
消化管は、口、食道、胃、小腸、大腸、肛門からなる1本の管です。
消化液は、食物を消化する液です。
消化液 | 消化系 |
唾液 | 唾液腺 |
胃液 | 胃 |
胆汁 | 胆のう ※肝臓がつくり、胆のうが貯蔵。十二指腸に出される |
すい液 | すい臓がつくり、十二指腸に出される |
【詳しい消化管】
- 胃と小腸の間には十二指腸があり、胆のうとすい臓につながっている
- 大腸は盲腸、結腸、直腸の3つからできている
【小腸の消化液】
- 腸には腸液がある
- 腸液;十二指腸液、小腸液、大腸液の3つ
- 小腸液には消化酵素がないが、小腸の壁には消化酵素がある
消化系は、消化管と消化液を分泌する器官をまとめたものです。
【消化系】
口、唾液腺、胃、肝臓、胆のう、
すい臓、小腸、大腸、肛門
消化液には、消化酵素がふくまれており、消化酵素が食物を分解するはたらきをもちます。
消化酵素について、次のようにまとめられます。
消化液 | 【消化酵素】はたらき |
唾液 | 【アミラーゼ】デンプンを分解 |
胃液 | 【ペプシン】タンパク質を分解 |
胆汁 | 【なし】脂肪の吸収を助ける |
すい液 |
|
消化液 | 【消化酵素】の詳しいはたらき |
唾液 | 【アミラーゼ】デンプンを麦芽糖(マルトース)に分解 |
胃液 | 【ペプシン】タンパク質をペプトンに分解 |
すい液 |
|
小腸の壁 |
|
消化(分解)によりできる栄養分
消化のはたらきにより、栄養分は小さく分解されると吸収されやすくなります。
主な栄養分であるデンプン、タンパク質、脂肪が分解されてできるものは、次のとおりです。
【栄養分の分解】
- デンプン →分解→ ブドウ糖
- タンパク質 →分解→ アミノ酸
- 脂肪 →分解→ 脂肪酸 、
モノグリセリド
デンプンの分解【ブドウ糖】
デンプンは、次の消化液や消化酵素により分解され、ブドウ糖になります。
【デンプンを分解しブドウ糖をつくる消化酵素】
消化液 | 消化酵素 |
唾液 | アミラーゼ |
すい液 | アミラーゼ |
(小腸) | 小腸の壁の消化酵素 |
ちなみに、デンプンを分解しブドウ糖をつくる小腸の壁の消化酵素は、マルターゼと言います。
タンパク質の分解【アミノ酸】
タンパク質は、次の消化液や消化酵素により分解され、アミノ酸になります。
【タンパク質を分解しアミノ酸をつくる消化酵素】
消化液 | 消化酵素 |
胃液 | ペプシン |
すい液 | トリプシン |
(小腸) | 小腸の壁の消化酵素 |
ちなみに、デンプンを分解しブドウ糖をつくる小腸の壁の消化酵素は、ペプチダーゼと言います。
脂肪の分解【脂肪酸、モノグリセリド】
脂肪は、次の消化液や消化酵素により分解され、脂肪酸とモノグリセリドになります。
【デンプンを分解するもの】
消化液 | 消化酵素 |
胆汁 | なし |
すい液 | リパーゼ |
【一覧表で解説!】消化酵素のしくみ|中2理科 生物
消化酵素は、決まった栄養分のみを分解するはたらきがあります。
中学理科で覚えてほしい消化酵素は、次の5つです。
中学理科で絶対に覚えたい消化酵素
- アミラーゼ
- ペプシン
- トリプシン
- リパーゼ
- 小腸の壁の消化酵素
本章では、消化酵素について詳しく解説します。
唾液の消化酵素【アミラーゼ】
上図のように、口に炭水化物(デンプン)を入れた場合の、唾液のはたらきを考えてみましょう。
消化酵素であるアミラーゼはデンプンを分解するはたらきがあります(下図▼)。
唾液のポイントは次の3点です。
- 口の中の唾液腺から出る唾液に、アミラーゼという消化酵素が含まれている
- 唾液は炭水化物のみを消化する
- アミラーゼは、デンプンを麦芽糖に分解する
胃液の消化酵素【ペプシン】
上図のように、胃にタンパク質(肉や魚)が運ばれた場合の、胃液のはたらきを考えてみましょう。
消化酵素であるペプシンはタンパク質を分解するはたらきがあります(下図▼)。
胃液のポイントは次の3点です。
- 胃から出る胃液に、ペプシンという消化酵素が含まれている
- 胃液はタンパク質のみを消化する
- ペプシンは、タンパク質を分解する
ちなみに、胃液は胃底腺から出ます。また、胃液には塩酸が含まれています。
胆汁【消化酵素×】
胆汁には消化酵素がありません。
なお、胆汁には脂肪の吸収をしやすくするはたらきがあります(下図▼)。
胆汁のポイントは次の3点です。
- 肝臓が胆汁をつくり、胆のうが胆汁をたくわえる
- 胆のうから十二指腸へ出だされる胆汁には、消化酵素がない
- 胆汁は脂肪の消化を助ける
すい液の消化酵素【アミラーゼ・トリプシン・リパーゼ】
すい液は、さまざまな消化酵素が含まれている、強い消化液です。上図のようにデンプンやタンパク質、脂肪を消化できます。
消化酵素であるアミラーゼ、トリプシン、リパーゼがはたらきます(下図▼)。
すい液はすい臓でつくられ、十二指腸に出されます。
- アミラーゼ;デンプンを分解し麦芽糖をつくる
- トリプシン;タンパク質を分解
- リパーゼ;脂肪を分解し、脂肪酸とモノグリセリドをつくる
小腸の消化酵素【小腸の壁の消化酵素】
小腸の壁には、さまざまな消化酵素があり、消化の最終処理を行います。
小腸の壁の消化酵素により、デンプンとタンパク質は、細胞呼吸に使えるような小さな栄養分にまで分解されます。
【小腸の壁の消化酵素のはたらき】
- デンプン→分解→ブドウ糖
- タンパク質→分解→アミノ酸
消化酵素の覚え方【だいたんスイッチ】
消化酵素は上図のように、ゴロ表(表+ゴロ合わせ)で覚えましょう。
消化酵素の覚え方のゴロ表のつくりかたは次の7ステップです。
step.1 縦に『だいたんすいっち』
『だいたんすいっち』は、次の消化液のことです。
- だ ;唾液
- い ;胃液
- たん ;胆汁
- すい ;すい液
- ち ;小腸の壁の消化酵素
step.2 1番上の列に『でたし』
『でたし』は、次の栄養分のことです。
- で;デンプン
- た;タンパク質
- し;脂肪
step.3 ななめに『でたし』
ななめに『でたし』をつけるのは、次のような意味を示します。
- 唾液は、デンプンを分解する
- 胃液は、タンパク質を分解する
- 胆汁は、脂肪の分解を助ける
step.4 「すい」の列に『ぜんぶ』
すい液は、デンプン・タンパク質・脂肪の全部を分解するため『ぜんぶ』と書きます。
step.5 一番下の列に『でた』
小腸の壁の消化酵素は、デンプンとタンパク質を分解するため『でた』と書きます。
step.6 丸印と三角印をつける
上図のように、印をつけます。印の意味は次のとおりです。
- 丸印;中学理科で覚えるべき消化酵素の名前があるもの
- 三角印;消化酵素を覚えなくてもいいもの
印の数が少ない三角の3カ所を覚えておくといいでしょう。『し・で・た』は三角、と覚えておきましょう。
step.7 丸印に『アアペトリ』
中学理科で覚えるべき消化酵素がある丸印に『アアペトリ』と書きます。
『アアペトリ』は、次の消化酵素を示しています。
- ア;アミラーゼ
- ぺ;ペプシン
- ト;トリプシン
- リ;リパーゼ
以上、7ステップでゴロ表を完成させ、消化酵素を覚えましょう。
『だいたんスイッチ、でたし、でたし、ぜんぶ、でた、アアペトリ』
吸収のしくみ|中2理科 生物
本章では、消化酵素により分解された栄養分が、吸収されるしくみを解説します。
栄養分を吸収する器官【小腸】
消化により小さくなった栄養分は、小腸の柔毛で吸収されます。
小腸の特徴は、次のとおりです。
【小腸】
- 小腸の内側の壁には、たくさんのひだがある
- ひだの表面には、小さな突起が多数ある
- 小さな突起を柔毛といい、栄養分を吸収する
- 柔毛があると、表面積が大きくなり、効率よく栄養分を吸収できる
栄養分を運ぶ管【毛細血管・リンパ管】
柔毛に吸収された栄養分は、次の2つのルートに分かれて運ばれます。
小腸の柔毛で吸収される栄養分
- ブドウ糖、アミノ酸
→毛細血管へ - 脂肪酸、モノグリセリド
→リンパ管へ
毛細血管は、全身をはりめぐらされている、細かく枝分かれして網目状になった血管です。
リンパ管は、脂肪などいろいろな物質を運ぶ管です。
ブドウ糖とアミノ酸を運ぶしくみ
ブドウ糖やアミノ酸などは、次のように全身の細胞へ運ばれます。
- ブドウ糖やアミノ酸、無機物は、小腸の柔毛で吸収されたあと、毛細血管に入る
- ブドウ糖とアミノ酸は毛細血管に入った後、肝臓に向かう
- 肝臓に入ったブドウ糖の一部は、グリコーゲンとして貯蔵される
- ブドウ糖の多くは、心臓のはたらきにより全身の細胞に送られ、細胞呼吸につかわれる。アミノ酸は、全身の細胞に送られ、体をつくる材料になる。
脂肪酸とモノグリセリドを運ぶしくみ
柔毛に吸収されるために分解されていた脂肪酸とモノグリセリドは、再び脂肪になり、リンパ管に入ります。
リンパ管は首の下で血管と合流し、心臓のはたらきにより全身の細胞に運ばれます。
大腸の役割
大腸のはたらきは、次の2点です。
- 水分やミネラルを吸収する
- 便をつくる
水分のほとんどは小腸で吸収され、残りを大腸が吸収し、全身の細胞へ送られます。
吸収されないもので便をつくり、肛門から排出します。
唾液のはたらきを確かめる実験|中2理科 生物
唾液のはたらきを確かめるためには、デンプンのりやベネジクト溶液、ヨウ素溶液を用いて、実験を行います。
この実験で確かめたい唾液のはたらきは、次のようなことです。
唾液(アミラーゼ)には、デンプンを分解するはたらきがある
本章では、デンプンのりを用いた唾液のはたらきを確かめる実験について、以下の項目で解説します。
- 手順
- 注意点
- 結果
- 考察
【手順】ベネジクト溶液は加熱!
デンプンのりを用いて唾液のはたらきを確かめる実験の手順は、次のとおりです。
- 試験管A・Cにデンプンのりを唾液、試験管B・Dにデンプンのりと水を入れる
- ビーカーに約40℃の湯を入れ、しばらくあたためる
- 試験管A・Bにヨウ素溶液を加える
- 試験管C・Dにベネジクト溶液・沸騰石を加えてガスバーナーで加熱する
【注意点】沸騰石を入れる理由は…
デンプンのりに対する唾液のはたらきを確かめる実験における、注意すべきことは次の5つです。
- 約40℃の湯に入れてあたためる
- 試験管BとDに水を入れる
- 沸騰石を入れる
- ベネジクト溶液は糖に反応する
- ヨウ素溶液はデンプンに反応する
上記4点について詳しく解説します。
約40℃の湯に入れてあたためる
約40℃の湯に入れてあたためる理由は、唾液はヒトの体温に近い温度でもっともよくはたらくためです。
試験管BとDに水を入れる
試験管BとDに水を入れる理由は、デンプンが分解されるのは、唾液のはたらきによることを確認するためです。
試験管BとDは対照実験だと言えます。
沸騰石を入れる
沸騰石を入れる理由は、突然沸騰すること(突沸)をさけるためです。
ベネジクト溶液は糖に反応する
ベネジクト溶液は、もとは青色の液体の試薬です。
ベネジクト溶液は加熱することで、反応を見られます。
ベネジクト溶液を加えて、加熱したときに見られる反応は、次の2パターンです。
- 麦芽糖やブドウ糖があると赤褐色に変化する
- 糖が少ないと黄色に変化する
ヨウ素溶液はデンプンに反応する
ヨウ素溶液は、デンプンがあると、青紫色に変化します。
なお、ヨウ素溶液は、反応を見るために加熱を行いません。
【結果】赤褐色と青紫色
デンプン入りの試験管に唾液や水を加え、ヨウ素溶液やベネジクト溶液の反応を見た結果は、次の図のようになります。
上図をまとめると、次のように言えます。
【ヨウ素溶液】
- 試験管A(デンプン+唾液)
→変化なし - 試験管B(デンプン+水)
→青紫色に変化
【ベネジクト溶液】
- 試験管C(デンプン+唾液)
→赤褐色に変化 - 試験管D(デンプン+水)
→変化なし
【考察】唾液はデンプンを分解する
唾液のはたらきを確かめる実験の結果と考察は、次の図のとおりです。
上図をまとめると、次のようなことを考察できます。
【試験管A・Bを比べる】
唾液が入っていた試験管Aでは、デンプンがなくなっていたことから、唾液のはたらきによってデンプンを分解することが分かる。
【試験管C・Dを比べる】
唾液が入っていた試験管Cでは、麦芽糖がつくられていたことから、唾液のはたらきによって麦芽糖がつくられることが分かる。
【試験管A・Cをまとめる】
唾液には、デンプンを麦芽糖などに分解するはたらきがあると言える。
【まとめ】消化酵素・消化と吸収のしくみを理解しよう|中2理科 生物
中学2年生で学習する、生物分野の消化と吸収について解説しました。
食物の栄養分と消化について、次のようにまとめるといいでしょう。
特に、大切なポイントは次のとおりです。
- 唾液腺がつくる唾液にはアミラーゼあり
- 胃がつくる胃液にはペプシンあり
- 肝臓がつくり、胆のうが貯蔵する胆汁には消化酵素なし
- すい臓がつくるすい液には、アミラーゼ・トリプシン・リパーゼあり
- 小腸は、壁に消化酵素があり、吸収も行う
ヒトの食物の消化と吸収については、下のノート図のようにまとめます。
消化系と消化液、消化酵素については下のようにゴロ表で覚えましょう。
で た し
だ 〇
い 〇
たん △
すい 〇 〇 〇
っち △ △
ななめに〇〇△「でたし」
「すい」の横は〇〇〇「ぜんぶ」
「っち」の横は△△「でた」
〇は消化酵素を示し、「アアペトリ」
消化、分解のポイントは、次のとおりです。
- デンプン →分解→ ブドウ糖
- タンパク質 →分解→ アミノ酸
- 脂肪 →分解→ 脂肪酸 、 モノグリセリド
吸収のポイントは、次のとおりです。
- 小腸の柔毛で、ブドウ糖・アミノ酸・脂肪酸・モノグリセリドを吸収
- ブドウ糖とアミノ酸;毛細血管→肝臓→全身の細胞へ
- 脂肪酸とモノグリセリド;脂肪に戻る→リンパ管→血管→全身の細胞へ
唾液の実験についてまとめたのが、下のノートです。
唾液のはたらきを確かめるための実験のポイントは、次のとおりです。
【実験の結果】
- 唾液入り試験管→デンプンなし・麦芽糖あり
- 水入り試験管→デンプンあり・麦芽糖なし
【実験の考察】
- 唾液にはデンプンを麦芽糖などに分解するはたらきがある
以上、本記事では消化と吸収について解説しました。
皆さんの科学力向上のお役に立てれば幸いです。