中学理科の現役教員けいが「中2理科の生物分野-反射と反応、運動と筋肉–」を、どこよりも分かりやすく解説します。
この記事を読むと、キソのポイントまとめだけでなく、実験もおさえたまとめノートにそって学習できるため、要点を理解しやすいです。
私が17年かけて培ってきた塾講師・教員経験を凝縮しました。難しくなってきた理科をしっかり理解した方は、ぜひ参考にしてください。
神経とは|中2理科 生物
神経とは、体外からの刺激情報を伝達したり、脳の命令を体内の各部に届けたりする、ヒモのようなものです。
ヒモに見える神経は、神経細胞の集まりです。神経細胞はニューロンとも言われています。
神経は、体のすみずみまで、網の目のようにはりめぐらされています。
神経は、大きく次の2つに分けられます。
神経とは
- 中枢神経
- 末しょう神経
神経系とは、信号の伝達に関わる器官のことです。中枢神経や末しょう神経などが神経系の器官です。
本章では、上記2種類の神経について解説します。
中枢神経とは【脳と脊髄】
中枢神経とは、脳や脊髄からなる神経です。
脳や脊髄は、全身に命令を送るはたらきをしています。
神経系の中心的な役割をしているため、中枢神経を守る骨があります。
中枢神経を守る骨
- 脳…頭の骨が守る
- 脊髄…背骨が守る
脳では感覚が生じます。
感覚とは、視覚(しかく)、聴覚(ちょうかく)、触覚(しょっかく)、味覚(みかく)、嗅覚(きゅうかく)などのことを言います。
脳は生じた感覚をもとに、行動を判断し、命令を出します。
感覚については、次の記事を参考にしてください▼
末しょう神経【運動神経・感覚神経】
末しょう神経とは、中枢神経から全身に広がっている神経です。
感覚神経、運動神経などが末しょう神経です。
刺激を信号に変えた情報は、伝わる向きが一定です。
末しょう神経と情報の伝わる向きは、次のようになっています。
神経と信号の向き
- 感覚神経;感覚器官からの信号を
中枢神経に伝える
(感覚器官…目や耳、皮膚など) - 運動神経;中枢神経からの命令信号を
運動器官などに伝える
(運動器官…筋肉、けんなど)
中学理科には出てきませんが、末しょう神経には自律神経と呼ばれる神経があります。
自律神経とは、呼吸、血液の循環、消化などを無意識に調整している神経です。
自律神経は、さらに交感神経と副交感神経に分けられます。
- 交感神経 ;活動、緊張させる
- 副交感神経;休息、リラックスさせる
例えば、交感神経は心臓の拍動を多くし、より強い活動をさせます。
逆に、副交感神経は拍動を遅くします。
反応を確かめる実験1【ものさしキャッチ】
生じた刺激に対し、どのような反応が生じるか確かめるために、ものさしをつかむ実験があります。
ものさしをつかむ実験をすると、神経のはたらきについて考えられます。
実験手順
実験手順は、次のとおりです。
〔手順〕
- 2人で実験を行う
- Aさんは、合図なしにものさしを落とす
- Bさんは、ものさしが動いたらつかむ
- 下のグラフから反応時間を求める
- 実験を3回くり返し、平均値を計算する
下図はものさしが落ちた距離[cm]を横軸に、ものさしが落ちるのに要する時間[s]を縦軸にとったものです。
例えば、3回実験を行った平均値が9cmだったばあい、ものさしをつかむための反応時間は約0.14秒だと分かります(下図)。
刺激と反応の経路
ものさしが動き始めてから、ものさしをつかむまで、体内で生じた反応の経路は、次のとおりです。
刺激→反応の経路【8ステップ】
- ものさしが動く
→光の刺激が生じる - 感覚器官である目が光をとらえる
→網膜が刺激を信号に変える - 感覚神経である視神経を信号が伝わる
- 脳へ信号が伝わる
→脳内で「見えた」という視覚が生じる
→「つかめ」という命令を出す - 脊髄へ命令信号が伝わる
- 運動神経を信号が伝わる
- 運動器官である筋肉へ信号が伝わる
- ものさしをつかむという反応が生じる
反応を確かめる実験2【手つなぎウォッチ】
生じた刺激に対し、どのような反応が生じるか確かめるために、手をつないで時間計測をする実験があります。
実験1では目で光の刺激を受けたのに対して、実験2では手を触られた刺激と神経のはたらきについて考えます。
手をつないで、ストップウォッチを押す実験には、2パターンの方法があります。
- 実験パターン1「最後の人が押す」
- 実験パターン2「最初の人が押す」
上記のパターンによって、計算方法がちがうので注意しましょう。
実験パターン1「最後の人が押す」
実験パターン1の特徴は、ストップウォッチを開始するヒトと停止させるヒトがちがうことです。
実験手順
実験手順は、次のとおりです。
〔手順〕
- 背中合わせに輪になり、横のヒトの手首をにぎる
- 最初のヒトは、ストップウォッチのスタートボタンを押し、同時に横のヒトの手首をにぎる
※最初のヒトは、ストップウォッチを最後のヒトに渡しておく - 横に横にと、にぎる作業を繰り返し、最後のヒトの手首がにぎられたらストップウォッチのストップボタンを押す
刺激と反応の経路
手首をにぎられてから、横のヒトの手首をにぎるまでの体内で生じた反応の経路は、次のとおりです。
刺激→反応の経路【9ステップ】
- 手首をにぎられる
→触られるという刺激が生じる - 感覚器官である皮膚が刺激を受け取る
→感覚点が刺激をとらえる - 感覚神経を信号が伝わる
- 脊髄へ信号が伝わる
- 脳へ信号が伝わる
→脳内で「触られた」という触覚が生じる
→「にぎれ」という命令を出す - 脊髄へ命令信号が伝わる
- 運動神経を信号が伝わる
- 運動器官である筋肉へ信号が伝わる
- 横のヒトの手首をにぎるという反応が生じる
1人あたりの反応時間
実験を行った3人のうち、刺激を受けて反応が生じたヒトは何人いるか考えましょう。
最初のヒトはストップウォッチを押して、横のヒトの手首をにぎっているだけで、特に刺激を受け取っていません。
3人で実験を行っていても、実際に刺激を受け、反応をしているのは2人だけです。
ストップウォッチの計測時間が0.42秒だった場合、反応対象者が2人なので、1人あたりの反応時間を計算すると、次のようになります。
【計算式】
0.42[s] ÷ 2[人] = 0.21[s/人]
1人あたりの反応時間は0.21秒となります。
実験パターン2「最初の人が押す」
実験1とはちがい、実験パターン2はストップウォッチを開始するヒトと停止させるヒトが同じです。
実験手順
実験手順は、次のとおりです。
〔手順〕
- 横1列になり、横のヒトの手首をにぎる
- 最初のヒトは、ストップウォッチのスタートボタンを押し、同時に横のヒトの手首をにぎる
※最初のヒトは、ストップウォッチを持ったまま
- 横に横にと、にぎる作業を繰り返し、端のヒトの手首がにぎられたら「ハイ」と言って手を挙げる
- 最初のヒトは、ストップウォッチのストップボタンを押す
刺激と反応の経路
手首をにぎられてから、横のヒトの手首をにぎるまでの体内で生じた反応の経路は、次のとおりです。
刺激→反応の経路【9ステップ】
- 手首をにぎられる
→触られるという刺激が生じる - 感覚器官である皮膚が刺激を受け取る
→感覚点が刺激をとらえる - 感覚神経を信号が伝わる
- 脊髄へ信号が伝わる
- 脳へ信号が伝わる
→脳内で「触られた」という触覚が生じる
→「にぎれ」という命令を出す - 脊髄へ命令信号が伝わる
- 運動神経を信号が伝わる
- 運動器官である筋肉へ信号が伝わる
- 横のヒトの手首をにぎるという反応が生じる
1人あたりの反応時間
刺激を受け、反応が生じるヒトが何人か考えましょう。
ストップウォッチを持っているヒトは、刺激を受けてから反応して停止ボタンを押します。
3人で実験を行うと、刺激を受け反応をしているのは3人になります。
ストップウォッチの計測時間が0.54秒だった場合、反応対象者が3人なので、1人あたりの反応時間を計算すると、次のようになります。
【計算式】
0.54 [s] ÷ 3 [人] = 0.18 [s/人]
1人あたりの反応時間は0.18秒となります。
反射とは|中2理科 生物
反射とは、刺激に対して無意識に起こる反応のことです。
反射は、通常の反応と比べて、刺激から反応までの時間が短くなります。
刺激の信号が伝わる前に、脊髄から直接命令の信号が出されるからです。
反射は、危険から体を守ったり、体のはたらきを調節したりするのに役立っています。
本章では、反射について解説します。
【本章で学べる内容】
- 反射の経路
- 反射の例
- よくある反射の間違い
反射の経路
反射で体が反応するとき、脳は命令を出しません。
熱いものを触ったときの、反射による反応の経路は、次のとおりです。
反射の経路【7ステップ】
- 刺激が生じる
- 感覚器官である皮膚が熱い刺激を受ける
- 感覚神経を信号が伝わる
- 脊髄へ信号が伝わる
→「手を放せ」という命令を出す - 運動神経を信号が伝わる
- 運動器官である筋肉へ信号が伝わる
- 熱いものから手を放すという反応が生じる
反射の例
中学理科でよく出る反射の例は、次のとおりです。
反射の例
- 熱いものを触ってしまい、急いで手を放す
- 物が飛んできて、目をつぶる
- 暗い部屋に入り、瞳の大きさが大きくなる
- 口の中に食物が入ると自然に唾液が出る
- ひざがしらの下をたたくと、あしが上がる
よくある反射の間違い
反射ではないのに、反射だと勘違いしてしまう反応を集めました。
反射じゃない例
- 名前を呼ばれたので、とっさに振り返った
- 蚊に刺されてかゆくなったので、手でかいた
- ドラマを見て、感動して、思わず泣いた
- ドッジボール大会でボールが飛んできたので、あわててキャッチした
- 信号が急に赤になったので、急いで立ち止まった
- 友人が変なことをしたので、こらえきれず笑った
- 部屋が暑かったので、しかたなく上着を脱いだ
- ポテトチップスがおいしすぎて、ついつい食べきってしまった
上の例は「思わず」や「とっさに」などの言葉でまどわしてきますが、反射ではありません。
反射は次の2点が条件だからです。
反射の条件
- 危険から体を守る
熱すぎる、痛いなどから守る - 体のはたらきを調節する
唾液や瞳など
運動と筋肉・骨格|中2理科 生物
本章では、動物の運動について解説します。
運動神経とは、中枢神経からの命令信号を運動器官などに伝える神経です。
運動器官には、筋肉やけんなどがあります。
運動には、運動神経や運動器官の他、骨や関節が関係しています。
本章では、次の内容が学べます。
【本章で学べる内容】
- 骨格と神経
- 運動と骨の関係
- 腕の筋肉と関節の関係
骨格と神経
骨格とは、骨がたがいに組み合わさり、つながっている構造のことです。
骨格には、内骨格と外骨格があります。
内骨格と外骨格
- 脊椎動物 → 内骨格
- 昆虫類や甲殻類 → 外骨格
骨格のはたらきは、次の2つです。
骨格のはたらき
- 体を支える
- 内臓や脳などの神経を保護する
運動と骨の関係
動物は、骨と筋肉がはたらき合うことで運動できます。
運動神経は、骨ではなく筋肉やけんとつながっているため、骨だけでは運動できないのです。
骨と筋肉の関係において重要な、関節とけん(腱)を知っておくといいでしょう。
関節とけん
- 関節 … 骨と骨がつながっているところ
- けん … 骨についている筋肉の両端の部分
関節について、股関節(こかんせつ)や肩関節などが有名です。
けんについて、アキレス腱(けん)や腱鞘炎(けんしょうえん;手首を痛める)ということばを聞いたことがあるでしょう。
腕の筋肉と関節の関係
骨についている筋肉は、2つの骨についています。
筋肉の両端はけんと呼ばれます。
2つの骨のつなぎ目は関節と言います。
骨についている筋肉は、対になって骨をはさむようにしてついています。
腕を伸ばしたり、曲げたりするときの、骨の両側についている1対の筋肉についてまとめると、下表のようになります。
伸ばす | 曲げる | |
筋肉A | ゆるんでいる | 収縮している |
筋肉B | 収縮している | ゆるんでいる |
上表から、筋肉Aは関節を曲げる筋肉であり、筋肉Bは関節を伸ばす筋肉だと言えます。
【まとめノート】反射神経と筋肉や運動について理解しよう|中2理科 生物
本記事では、反射神経と運動神経、反射と反応について学習しました。
神経系や、中枢神経と末しょう神経については、次のようにまとめるといいでしょう。
ふだん使っている運動神経や感覚ということばを、きちんと理科的に理解しておきましょう。
神経 | 中枢神経 | ・脳 ・脊髄 |
末しょう神経 | ・運動神経 ・感覚神経 |
どのような神経を伝達して、刺激から反応が生じるかを確かめる実験については、次のノートのようにまとめるといいでしょう。
ものさしをつかむ実験では、ものさしの落下距離から、反応時間を求めるグラフの読み方を理解しましょう。
ストップウォッチで反応時間を計測する実験では、反応対象者が何人いるかを考えることがポイントです。
反射については、次のまとめノートを参考にしてください。
反射の重要ポイントは、次の4つです。
反射のはたらき
- 脳ではなく、脊髄が命令を出す
- 反応までの時間が短い
- 危険を回避したり、体のはたらきを調節する
- 刺激に対して、無意識に起こる
運動神経や運動器官など、運動ということばが多く出ているため、運動についてまとめることがおすすめです。
骨格、関節、けんなど、体の各部の役割を、上のノートのように整理しておくといいでしょう。
以上、中学2年生の生物分野『反射神経と運動神経、筋肉と運動』についての解説でした。
感覚器官と神経の解説は、こちらから復習できます▼
内骨格や外骨格については、中学1年生で学習した動物編を見直すといいでしょう▼
・運動神経いいね!
・反射神経がわるい
など、ふだんつかっていることばを理科的に解説しました!
この記事が、皆さんの理解のお役に立てれば幸いです。