中学理科の現役教員けいが「中2理科の生物分野-呼吸のしくみと肺のつくり–」を、どこよりもかんたんに解説します。
この記事を読むと、テストに出る問題を意識してつくられた分かりやすいまとめノートにそって学習できるため、肺のはたらきがすぐに理解できるようになります。
私が17年かけて培ってきた塾講師・教員経験を凝縮しました。大好きな理科をもっと分かるようになりたい方はぜひ参考にしてください。
肺のつくり|中2理科 生物
本章で出てくるキーワードは次のとおりです。
- 気管
- 気管支
- 肺
- 肺胞
- 毛細血管
- 胸こう
気管や気管支、肺は呼吸系と言って、呼吸に関わる器官です。
本章では、呼吸系のうち、気管、肺胞、肺のつくりを詳しく解説します。
【本章で学べる内容】
- 【気管とは】空気のとおり道
- 【肺胞とは】肺の中にある袋
- 【肺とは】胸こうの中
- ペットボトルを肺に見立てた模擬実験
【気管とは】空気のとおり道
口や鼻で吸い込んだ空気は、気管を通って肺に入ります。
肺には、気管から枝分かれした気管支と、気管支の先にある肺胞があります。
気管にある異物を取り除くために行う反射が、咳(せき)です。
咳は気管内では、およそ300m/秒あります。この速さは、一般的な旅客機(飛行機)の飛行速度とほぼ同じです。
なお、咳は口の外に出ると、およそ40m/秒となり、強い台風の風速とほぼ同じです。
【肺胞とは】肺の中にある袋
肺胞とは、気管支の先に多数ある小さな袋のことです。
肺胞の役割は、酸素と二酸化炭素を入れ替えることです。
肺胞が多数ある理由は、肺の表面積が大きくなり、効率よく気体の交換ができるからです。
なお、毛細血管が肺胞を取り囲んでいます。
肺胞のひとつひとつは0.1mmと小さく、肺胞の数は6億個もあると言われています。
肺胞を全て広げると、100㎡(平方メートル)もの面積があります。これはテニスコート半面ほどの広さです。
【肺とは】胸こうの中
肺は、横隔膜(おうかくまく)と肋骨(ろっこつ)で囲まれています。
横隔膜と肋骨で囲まれた空間を胸こう(きょうこう)と言います。
肺には筋肉がないため、みずから膨らんだり、縮んだりできません。
【呼吸の誤解ポイント】
- × 息を吸うから肺が膨らむ
→ ○ 肺が膨らむから息を吸える - × 息を吐くから肺が縮む
→ ○ 肺が縮むから息を吐ける
肺が膨らんだり縮んだりするのは、横隔膜と肋骨の動きが関係しています。
横隔膜そのものは筋肉でできており、肋骨の間には筋肉があります。横隔膜と肋骨が上下することで、みずから収縮できない肺が収縮できるようになるのです。
呼吸と肺の関係は、次のとおりです。
【呼吸と肺の関係】
- 息を吸うとき
・横隔膜が下がる
・肋骨が上がる
・胸こう体積が大きくなる - 息を吐くとき
・横隔膜が上がる
・肋骨が下がる
・胸こう体積が小さくなる
肺には右肺(うはい)と左肺(さはい)があり、実は右肺の方が重いです。
右肺の方が重い理由は、心臓の位置に関係しています。
胸の中央にある心臓は、3分の2ほどが胸の左よりにあるため、左肺の方に少しでっぱっているのです。
左肺は心臓におされて少し小さくなってしまっているというワケです。
ペットボトルと風船の肺モデル
ペットボトルと風船を用いて、ヒトの肺をモデルにした実験グッズをかんたんにつくれます。
ペットボトルによる肺モデルを理解するために、胸こう体積と呼吸の関係を思い出しておきましょう▼
【呼吸と胸こう体積の関係】
- 息を吸う = 胸こう体積【大】
※横隔膜〔下へ〕、肋骨〔上へ〕 - 息を吐く = 胸こう体積【小】
※横隔膜〔上へ〕、肋骨〔下へ〕
実験装置における、各部品は次のように、肺のつくりを表しています。
ペットボトルと肺の関係性
- 風船 = 肺
- 管 = 気管
- ペットボトル本体 = 肋骨
- ゴム膜 = 横隔膜
- ペットボトル内の空間 = 胸こう
ペットボトルに変化を与えたときの、反応は次のようになります。
ゴム膜の上下と風船の収縮の関係
- ゴム膜を引き下げる
→ 風船が膨らむ(大きくなる)
= 横隔膜〔下がる〕
→ 「息を吸う」を表す - ゴム膜を押し上げる
→ 風船が縮む(小さくなる)
= 横隔膜〔上がる〕
→「息を吐く」を表す
呼吸のしくみ|中2理科 生物
本章で出てくるキーワードは次のとおりです。
- 呼吸運動
- 毛細血管
- 酸素
- 二酸化炭素
ヒトの呼吸は肺を用いて行われます。
本章では、呼吸運動や気体の交換のしくみを詳しく解説します。
【本章で学べること】
- 【呼吸運動とは】息を吸ったり吐いたり
- 肺が気体を交換するしくみ
- 酸素の動き
- 二酸化炭素の動き
【呼吸運動とは】息を吸ったり吐いたり
息を吸ったり、吐いたりするはたらきを呼吸運動と言います。ヒトは肺を用いて呼吸します。
ちなみに、水中の動物はえらで呼吸をし、昆虫は気管(気門とつながっている)で直接呼吸をします。
詳しくは次の記事を参考にしてください▼
肺が気体を交換するしくみ
口や鼻から気管を通り、肺に入ってきた空気は肺胞へ達します。
肺胞のはたらきは次のとおりです。
肺胞のはたらき
- 気管支から送られてきた酸素を、毛細血管に届ける
- 毛細血管の中の二酸化炭素を、受け取って体外に出す
肺胞内から毛細血管へ届けられる気体が酸素で、毛細血管から肺胞が受け取る気体が二酸化炭素です。
上図のうち、外向き矢印が酸素、内向き矢印が二酸化炭素です。
毛細血管の中で酸素を受け取るのが赤血球です。また、毛細血管内で、二酸化炭素を運ぶのは血しょうです。
酸素の動き
口や鼻から吸い込んだ酸素の動きは、次のとおりです。
【酸素の動き】
- 口や鼻から気管へ入る
- 気管支へ入る
- 肺胞へ入る
- 毛細血管へ入り、赤血球が運ぶ
- 心臓へ運ばれる
- 心臓から全身の細胞へ運ばれる
- 細胞呼吸が行われ、酸素が使われる
細胞呼吸は、細胞が酸素をつかって栄養分を分解し、エネルギーをとり出すはたらきです。
細胞呼吸でエネルギーをとり出したあとは、水や二酸化炭素が発生します。
細胞呼吸については、次の記事で復習するといいでしょう▼
二酸化炭素の動き
細胞呼吸によって生じた二酸化炭素は不要物なので、体外へ出す必要があります。
二酸化炭素が体外へ出されるまでの流れは、次のとおりです。
【二酸化炭素の動き】
- 全身の細胞で、細胞呼吸が行われて二酸化炭素が生じる
- 毛細血管の中の血しょうが心臓へ運ぶ
- 肺へ運ばれる
- 肺胞が二酸化炭素を受け取る
- 体外へ出される
『1回呼吸したくらいでは、肺はリフレッシュしない』
肺には、3リットルほどの空気が入っています。
なお、1回の呼吸につき0.5リットルの空気が出入りするため、肺の中の空気はほぼ入れ替わらないのです。
単純計算で、6回呼吸しないと、肺の中の空気はリフレッシュされないというワケですね。
肺呼吸と細胞呼吸のちがい|中2理科 生物
1章で肺呼吸、2章で細胞呼吸という用語が出てきました。どちらも呼吸ですが、はたらきが異なります。
本章では、肺呼吸と細胞呼吸のちがいを解説します。
【本章で学べる内容】
- 肺呼吸は「外呼吸」
- 細胞呼吸は「内呼吸」
- 肺呼吸と細胞呼吸のちがい
肺呼吸は「外呼吸」
外呼吸(がいこきゅう)とは、体の外にある酸素を肺が取り入れ、二酸化炭素を体外へ出すはたらきを言います。
魚類の場合、肺ではなくえらで外呼吸を行います。すなわち、外呼吸は動物によって、肺呼吸だったりえら呼吸だったりするのです。
細胞呼吸は「内呼吸」
内呼吸(ないこきゅう)とは、細胞と血液との気体の交換をさします。
血液内の酸素が細胞に届けられ、細胞がエネルギーをとり出したあと、細胞内に生じる二酸化炭素が血液に出されます。
生物の分類に関係なく、細胞呼吸は行われます。
細胞呼吸は、動物でも植物でも行われるのです。
肺呼吸と細胞呼吸のちがい
肺呼吸と細胞呼吸では、気体の交換を行う場所や大きさが異なります。
肺呼吸(外呼吸)は動物の体の外にある酸素を吸いこみ、二酸化炭素を体外へ出すはたらきです。細胞呼吸に比べて、大きく気体が出し入れされます。
一方、細胞呼吸(内呼吸)は細胞が酸素を受け取り、細胞が二酸化炭素を出すはたらきです。肺呼吸に比べて、小さく気体が交換されます。
【まとめ】肺と呼吸のしくみを理解しよう|中2理科 生物
中学2年生で学習する、生物分野の肺と呼吸について解説しました。
呼吸のしくみは、次のようにまとめるといいでしょう▼
- 肺胞…肺胞が多数あると、肺の表面積が大きくなり、効率よく気体の交換ができる
- 息を吸う…横隔膜〔下〕+肋骨〔上〕=胸こう体積【大】
- 酸素は肺胞から毛細血管へ、二酸化炭素は毛細血管から肺胞へ受け渡される
以上、中学2年生の生物分野『呼吸のしくみと肺のつくり』についての解説でした。
細胞呼吸についてはこちらの記事を参考にしましょう▼
動物の呼吸の仕方や動物の分類については、こちらから復習できます▼
皆さんの理解のお役に立てれば嬉しいです。