中学理科の現役教員けいが「中2理科の化学分野-熱分解–」を、超分かりやすく解説します。
炭酸水素ナトリウムと酸化銀、過酸化水素水の熱分解の実験まとめを、たくさんの図解とともにていねいに解説しています。
私が17年かけて培ってきた塾講師・教員経験を凝縮しました。キソから徹底的に学びたい方は、ぜひ参考にしてください。
熱分解とは?|中2理科 化学
化学反応(化学変化)のうち、1つの純物質(化合物)に電気を与えたり、熱を与えたりして別の物質ができる変化を分解といいます。
本章で学べる内容
- 分解は物質が分かれる化学変化である
- 分解には電気分解と熱分解がある
本章では、分解について詳しく解説します。
分解は物質が分かれる化学変化である
分解とは、1種類の物質が2種類以上の物質にわかれる化学変化(化学反応)です。
わかれる前の物質を化合物と言います。
変化のようすは、次のように表せます。
分解の変化のようす
- 2つの物質に分かれる分解
A→B+C - 3つの物質に分かれる分解
A→B+C+D
分解には電気分解と熱分解がある
分解には、次の2種類の反応があります。
分解
- 熱分解;加熱による物質の分解
- 電気分解;電気による物質の分解
テストでよく出る分解の化学反応式の一覧を、熱分解と電気分解に分けて紹介します。
- 炭酸水素ナトリウムの熱分解
2NaHCO₃→Na₂CO₃+CO₂+H₂O - 酸化銀の熱分解
2Ag₂O→4Ag+O₂ - 過酸化水素水の熱分解
2H₂O₂→O₂+2H₂O
- 水の電気分解
2H₂O→2H₂+O₂ - 塩酸の電気分解
2HCl→H₂+Cl₂ - 塩化銅の電気分解
CuCl₂→Cu+Cl₂
【実験】炭酸水素ナトリウムの熱分解|中2理科 化学
炭酸水素ナトリウムの熱分解実験について、詳しく解説します。本章で学べる内容は次のとおりです。
本章で学べる内容
- 炭酸水素ナトリウムの性質
- 炭酸水素ナトリウムの分解実験の手順
- 炭酸水素ナトリウムの分解実験の注意点
- 炭酸水素ナトリウムの分解実験の結果
- 炭酸水素ナトリウムの分解実験の考察
- 炭酸水素ナトリウムの分解の化学反応式
炭酸水素ナトリウムの性質
炭酸水素ナトリウムは、別名「重曹(じゅうそう)」と言われる弱アルカリ性の白い粉末です。
重そうは、料理におけるふくらし粉や、そうじにおける汚れ落としなど、日常生活のさまざまな場面で使われています。
炭酸水素ナトリウムの特徴は、次のとおりです。
炭酸水素ナトリウムの特徴
- 化学式;NaHCO₃
- 水にとけにくい
- 弱アルカリ性
炭酸水素ナトリウムの分解実験の手順
炭酸水素ナトリウムの分解実験の手順を解説します。
炭酸水素ナトリウムの分解実験の手順
- 炭酸水素ナトリウムを試験管に入れ、装置を組み立てる
- 試験管をガスバーナーで加熱する
- 1本目の試験管に集めた気体は捨てる
- 発生した気体を、3本の試験管(A、B、C)に集める
- 試験管Aに石灰水を入れてよく振る
- 試験管Bにマッチの火を近づける
- 試験管Cに火のついた線香を入れる
- 加熱した試験管の口付近についた液体に青色の塩化コバルト紙をつける
- 炭酸水素ナトリウムと、加熱後の白い物質を水にとかし、とけ方のちがいを観察する
- 炭酸水素ナトリウムと、加熱後の白い物質を水にとかし、フェノールフタレイン溶液を加え、色を観察する
炭酸水素ナトリウムの分解実験の注意点
炭酸水素ナトリウムを加熱する実験では、次のような点に注意しましょう。
炭酸水素ナトリウムの加熱実験の注意点と理由
- 試験管の口を、底より下げる
[理由]できた液体が加熱部に流れることを防ぐため - 1本目の気体を捨てる
[理由]初めは、試験管中の気体を含むため - 火を消す前に、ガラス管を水から出す
[理由]水の逆流を防ぐため
なお、上記の注意点1の理由は「発生した液体が加熱部分に流れると、試験管が割れることがあるから」でもOKです。
炭酸水素ナトリウムの分解実験の結果
炭酸水素ナトリウムを加熱すると、次の3種類の物質が発生します。
炭酸水素ナトリウムの加熱後発生する物質
- 気体:ガラス管から出てくる
- 液体;加熱した試験管の口付近につく
- 固体;加熱した試験にのこる
上記の3種類の物質の性質を調べた結果を、本節でまとめます。
結果1.3本の試験管に集めた気体について
発生した気体の性質を調べるには、次の実験手順を行います。
発生した気体を調べる実験手順
- 発生した気体を、3本の試験管(A、B、C)に集める
- 試験管Aに石灰水を入れてよく振る
- 試験管Bにマッチの火を近づける
- 試験管Cに火のついた線香を入れる
発生した気体の性質を調べた結果は、次のとおりです。
【結果】発生した気体の性質
- 試験管Aに石灰水を入れてよく振ると、白くにごる
- 試験管Bにマッチの火を近づけると、変化なし
- 試験管Cに火のついた線香を入れると、火が消える
結果2.試験管の口付近についた液体について
発生した液体の性質を調べるには、次の実験手順を行います。
発生した液体を調べる実験手順
- 加熱した試験管の口付近についた液体に青色の塩化コバルト紙をつける
発生した液体の性質を調べた結果は、次のとおりです。
【結果】発生した液体の性質
- 加熱した試験管の口付近についた液体に青色の塩化コバルト紙をつけると、赤色に変化する
結果3.試験管にのこった固体について
試験管にのこった固体の性質を調べるには、次の実験手順を行います。
試験管にのこった固体を調べる実験手順
- 炭酸水素ナトリウムと、加熱後の白い物質を水にとかし、とけ方のちがいを観察する
- 炭酸水素ナトリウムと、加熱後の白い物質を水にとかし、フェノールフタレイン溶液を加え、色を観察する
試験管にのこった固体の性質を調べた結果は、次のとおりです。
【結果】試験管にのこった固体の性質
- 加熱後の白い物質の方が、水によくとける
- 水にとかしてフェノールフタレイン溶液を加えると、加熱後の白い物質の方が、濃い赤色を示す
炭酸水素ナトリウムの分解実験の考察
実験後発生した3種類の物質について、それぞれ結果をもとに考察します。
考察1.3本の試験管に集めた気体について
発生した気体の性質は、次の3点でした。
【結果】発生した気体の性質
- 試験管Aに石灰水を入れてよく振ると、白くにごる
- 試験管Bにマッチの火を近づけると、変化なし
- 試験管Cに火のついた線香を入れると、火が消える
上記の気体の性質から、発生した気体は二酸化炭素であると考察できます。
考察2.試験管の口付近についた液体について
発生した液体の性質は、次のとおりです。
【結果】発生した液体の性質
- 加熱した試験管の口付近についた液体に青色の塩化コバルト紙をつけると、赤色に変化する
上記の液体の性質から、発生した液体は水であると考察できます。
考察3.試験管にのこった固体について
試験管にのこった固体の性質は、次のとおりです。
【結果】試験管にのこった固体の性質
- 加熱後の白い物質の方が、水によくとける
- 水にとかしてフェノールフタレイン溶液を加えると、加熱後の白い物質の方が、濃い赤色を示す
上記の固体の性質から、加熱後のこった物質は、加熱前とは別の物質である炭酸ナトリウムに変化していることが考察できます。
炭酸水素ナトリウムの分解の化学反応式
炭酸水素ナトリウムの熱分解の化学反応式は次のとおりです。
炭酸水素ナトリウムの熱分解の化学反応式
2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + CO₂ + H₂O
炭酸水素ナトリウム→炭酸ナトリウム+二酸化炭素+水
【実験】酸化銀の熱分解|中2理科 化学
酸化銀の熱分解実験について、詳しく解説します。本章で学べる内容は次のとおりです。
本章で学べる内容
- 酸化銀の性質
- 酸化銀の分解実験の手順
- 酸化銀の分解実験の注意点
- 酸化銀の分解実験の結果
- 酸化銀の分解実験の考察
- 酸化銀の分解の化学反応式
酸化銀の性質
酸化銀は、黒い粉末です。
酸化銀は、銀とはちがい、金属の性質は見られません。
酸化銀の分解実験の手順
酸化銀の分解実験の手順を解説します。
酸化銀の分解実験の手順
- 酸化銀を試験管に入れ、装置を組み立てる
- 試験管をガスバーナーで加熱する
- 加熱している試験管内の物質の色の変化を観察する
- 1本目の試験管に集めた気体は捨てる
- 気体を集めた試験管に火のついた線香を入れる
- 試験管の中に残った物質をとり出し、押し固めてから薬さじの裏側でこする
- 試験管の中に残った物質をとり出し、金づちでたたく
- 試験管の中に残った物質をとり出し、電気を通すか調べる
酸化銀の分解実験の注意点
酸化銀を加熱する実験では、次のような点に注意しましょう。
酸化銀の加熱実験の注意点と理由
- 試験管の口を、底より下げる
[理由]できた液体が加熱部に流れることを防ぐため - 1本目の気体を捨てる
[理由]初めは、試験管中の気体を含むため - 火を消す前に、ガラス管を水から出す
[理由]水の逆流を防ぐため
なお、上記の注意点2の理由は「はじめは、装置内にあった空気を含むため」でもOKです。
酸化銀の分解実験の結果
酸化銀を加熱すると、次の2種類の物質が発生します。
酸化銀の加熱後発生する物質
- 気体:ガラス管から出てくる
- 固体;加熱した試験にのこる
上記の2種類の物質の性質を調べた結果を、本節でまとめます。
結果1.試験管に集めた気体について
発生した気体の性質を調べるには、次の実験手順を行います。
発生した気体を調べる実験手順
- 気体を集めた試験管に、火のついた線香を入れる
発生した気体の性質を調べた結果は、次のとおりです。
【結果】発生した気体の性質
- 試験管に火のついた線香を入れると、激しく燃える
結果2.試験管にのこった固体について
試験管にのこった固体の性質を調べるには、次の実験手順を行います。
試験管にのこった固体を調べる実験手順
- 加熱している試験管内の物質の色の変化を観察する
- 試験管の中に残った物質をとり出し、押し固めてから薬さじの裏側でこする
- 試験管の中に残った物質をとり出し、金づちでたたく
- 試験管の中に残った物質をとり出し、電気を通すか調べる
試験管にのこった固体の性質を調べた結果は、次のとおりです。
【結果】試験管にのこった固体の性質
- 加熱につれて、物質の色が黒から白に変わる
- 薬さじでこすると、金属光沢が出る
- 金づちでたたくと、うすく広がる。つまり、展性を示す
- 電気を通す。つまり、電気伝導性を示す
酸化銀の分解実験の考察
実験後発生した2種類の物質について、それぞれ結果をもとに考察します。
考察1.試験管に集めた気体について
発生した気体の性質は、次のとおりです。
【結果】発生した気体の性質
- 試験管に火のついた線香を入れると、激しく燃える
上記の気体の性質から、発生した気体は酸素であると考察できます。
考察2.試験管にのこった固体について
試験管にのこった固体の性質は、次のとおりです。
【結果】試験管にのこった固体の性質
- 加熱につれて、物質の色が黒から白に変わる
- 薬さじでこすると、金属光沢が出る
- 金づちでたたくと、うすく広がる。つまり、展性を示す
- 電気を通す。つまり、電気伝導性を示す
上記の固体の性質から、加熱後のこった物質は、加熱前とは別の物質である銀に変化していることが考察できます。
酸化銀の分解の化学反応式
酸化銀の熱分解の化学反応式は、次のとおりです。
酸化銀の熱分解の化学反応式
2Ag₂O → 4Ag + O₂
酸化銀 → 銀 + 酸素
【実験】過酸化水素水の熱分解|中2理科 化学
過酸化水素水の分解は、中学1年の気体発生の単元で学習しています。
中学1年では、過酸化水素水の分解は「酸素の発生」において学習します。
中学1年で学習する酸素の発生実験は次の4つです。
酸素の発生
- うすい過酸化水素水+二酸化マンガン
- オキシドール+ダイコンおろし
- 過炭酸ナトリウム+約60℃の湯
- 風呂がま洗浄剤+約60℃の湯
※ダイコンおろしはレバーに置き換えてもOK
上記4つの実験は、それぞれ全くちがう物質を反応させているように見えますが、実は「過酸化水素水の分解」によって酸素が発生します。
本章では、中1で学習する過酸化水素水による酸素の発生の発展として、中学2年生に向けてまとめてあります。
本章で学べる内容
- 過酸化水素水の性質
- 過酸化水素水の分解実験の手順
- 過酸化水素水の分解実験の注意点
- 過酸化水素水の分解実験の結果
- 過酸化水素水の分解実験の考察
- 過酸化水素水の分解の化学反応式
二酸化マンガンやダイコンおろし、レバーは触媒と言われ、分解を促進するために使います。
よくある勘違い
× 過酸化水素水+二酸化マンガン→酸素+水
○ 過酸化水素水→酸素+水
オキシドールの主成分は過酸化水素水です。上記の実験1と実験2は、薬品を少し変えているだけで現象は同じです。
過炭酸ナトリウムに湯を加えると、過酸化水素が生じます。過酸化水素が生じたあと、さらに反応が続いて、酸素が発生するのです。
風呂がま洗浄剤の主成分は過炭酸ナトリウムなので、実験3と実験4は薬品がちがうだけで、同じ現象です。
過酸化水素水の性質
過酸化水素水は過酸化水素H₂O₂を水に溶かした水溶液です。過酸化水素水の化学式は、中学理科ではH₂O₂で表します。
過酸化水素水は、無色透明の液体で、弱い特有のにおいがあります。
過酸化水素水の分解実験の手順
過酸化水素水の分解実験の手順を解説します。
過酸化水素水の分解実験の手順
- うすい過酸化水素水と二酸化マンガンを三角フラスコに入れ、装置を組み立てる
- 気体の発生が少ないときは、湯の入った水槽に三角フラスコを入れてあたためる
- 試験管2本分の気体は捨てる
- 気体を集めた試験管Aに火のついた線香を入れる
- 気体を集めた試験管Bに石灰水を入れ、ゴム栓をしてよく振る
過酸化水素水の分解実験の注意点
過酸化水素水を分解する実験では、次のような点に注意しましょう。
過酸化水素水の分解実験の注意点と理由
- 水槽の中の試験管は、はじめは水で満たしておく
[理由]発生した気体のみを集めるため - 2本分の気体を捨てる
[理由]はじめに出てくる気体は、三角フラスコ内の気体を含むため
なお、上記の注意点2では「はじめは、装置内にあった空気を含むため」でもOKです。
過酸化水素水の分解実験の結果
過酸化水素水の分解実験により、試験管に集めた気体の性質を調べた結果は、次のとおりです。
【結果】発生した気体の性質
- 気体を集めた試験管Aに火のついた線香を入れると、激しく燃える
- 気体を集めた試験管Bに石灰水を入れ、ゴム栓をしてよく振ると、変化なし
過酸化水素水の分解実験の考察
過酸化水素水の分解実験により発生した気体の性質は、次の2点でした。
【結果】発生した気体の性質
- 気体を集めた試験管Aに火のついた線香を入れると、激しく燃える
- 気体を集めた試験管Bに石灰水を入れ、ゴム栓をしてよく振ると、変化なし
上記の気体の性質から、発生した気体は酸素であると考察できます。
過酸化水素水の分解の化学反応式
過酸化水素水の分解の化学反応式は、次のとおりです。
過酸化水素水の分解の化学反応式
2H₂O₂ → 2H₂O + O₂
過酸化水素 → 水 + 酸素
【まとめノート】熱分解は実験をイメージして攻略する!|中2理科 化学
本記事では、中学2年で学習する熱分解を解説しました。なお、熱分解について、炭酸水素ナトリウム、酸化銀、過酸化水素水について、実験を中心にまとめました。
化学変化や化学反応式について復習したい方は、下のノートを参考にしてください▼
本記事では、分解のうち、熱分解についてを詳しくまとめました。
1種類の純物質(化合物)が、2種類以上の物質に分かれる化学変化
分解の化学反応式は、次のようにノートにまとめました。参考にしてください▼
- 炭酸水素ナトリウムの熱分解
2NaHCO₃→Na₂CO₃+CO₂+H₂O - 酸化銀の熱分解
2Ag₂O→4Ag+O₂ - 過酸化水素水の熱分解
2H₂O₂→O₂+2H₂O
炭酸水素ナトリウムの分解については、下のノートのようにまとめるといいでしょう▼
炭酸水素ナトリウムの分解により、次の3種類の物質が発生します。
炭酸水素ナトリウムの分解で生じる3種類の物質と確かめ方
- 二酸化炭素;石灰水が白くにごる
- 水;塩化コバルト紙が赤色に変化する
- 炭酸ナトリウム;フェノールフタレイン溶液が濃い赤色に変化する
酸化銀の分解については、下のノートのようにまとめると効果的です▼
酸化銀の分解により、次の2種類の物質が発生します。
酸化銀の分解で生じる2種類の物質と確かめ方
- 酸素;試験管に線香を入れると激しく燃える
- 銀;薬さじでこすると金属光沢、金づちでたたくと展性、電気を通すと電気伝導性などの性質が見られる
以上、中学2年生の化学分野『熱分解』の解説でした。
原子と元素は、こちらから復習できます▼
化学式や分子は、次の記事も参考にしてください▼
入試や定期テストでよく出る化学反応式一覧は、こちらからどうぞ▼
この記事が、皆さんの理解のお役に立てれば幸いです。