中学理科 PR

中2理科|発熱量の求め方!電熱線実験の電力量計算・カロリー公式を分かりやすく解説

電熱線 発熱量 電力量
記事内に広告を含む場合があります

発熱量の計算って、電力量とどう違うの?」

水温の上昇グラフの意味が分からない…!」

この記事で分かること 1.電熱線による発熱実験のしくみ 2.発熱量(J)・電力(W)の計算のしかた 3.カロリー計算とジュールの関係

発熱量の計算は、中学理科の定期テストや入試で必ず出題されるのに、苦手な人が多い単元です。

計算問題オームの法則電力公式を応用する難問なので、ライバルと差がつくポイントでもあります。

そこで、現役教師である私が、計算が苦手な人でも分かるように徹底解説します。


電気の基礎から実験レポートの考察まで、この記事1本で発熱量を完ぺきにカバーします。

けい先生
けい先生
最後までこの記事を読み発熱量の完全攻略を目指しましょう!

【ジュールの落とし穴】発熱量の計算公式と電力量

発熱量電力量も、どちらもエネルギーの量なので、単位はジュールJで同じです。

◎電力量(ジュール )とは、電流による電気エネルギーの量 ・公式;電力量 = 電力 × 時間 ◎発熱量(ジュール)とは、電熱線による熱エネルギーの量 ・公式; 発熱量 = 電力 × 時間 ➡すなわち、電力量[J]=発熱量[J]

しかし電力量という用語がイメージできず、電力量発熱量の計算に苦戦する人は多いです。

けい先生
けい先生
発熱量オームの法則電力公式をフル活用しないと計算できない難問です

 

この章では「どっちもジュール」である発熱量電力量のしくみにふれ、発熱量の求め方を誰にでも分かる4ステップに分けて解説します。

この章を最後まで読めば「ジュールの落とし穴」を回避できるようになるでしょう。

【どっちもジュール】発熱量と電力量

発熱量電力量は、どちらもエネルギーの量を表しており、単位はジュールで同じです。

そもそもエネルギーとは?

エネルギーとは「○○することができる」という「能力」です。

  • 熱エネルギー:物体の温度を変化させる能力 熱エネルギーの量 = 熱量発熱量
  • 電気エネルギー:電気の力で何かをする能力 電気エネルギーの量 = 電力量

どちらも能力なので、単位は共通してジュールJを使います。

電熱線は「熱への100%変換装置」

電熱線 電気抵抗が大きく、 電流を流したときに 熱を発生させる金属線。 主な素材はニクロム線。

電熱線は「電気エネルギーを熱エネルギーに変える」器具です。

電熱線について、中学理科の計算では次のように前提条件をもうけています。

電熱線で使われた電気エネルギーは、100%すべて熱エネルギーに変わる

※補足:本来は、光や音など、ごくわずかに別のエネルギーに置き換わってしまいますが、計算を簡単にするため無視するということです。

発熱量公式【例題アリ】

「電熱線が使った電気の量(電力量)」と、「電熱線によって発生した熱の量(発熱量)」は、完全に等しくなります

◎電力量(ジュール )とは、電流による電気エネルギーの量 ・公式;電力量 = 電力 × 時間 ◎発熱量(ジュール)とは、電熱線による熱エネルギーの量 ・公式; 発熱量 = 電力 × 時間 ➡すなわち、電力量[J]=発熱量[J]

発熱量は次の公式で求めます。

$$ \begin{aligned} \text{電力量 [J]} &= \text{発熱量 [J]} \\ &= \text{電力 [W]} \times \text{時間 [s]} \end{aligned} $$


【例題1】 電力30Wの電熱線を2分間使うとき、発生する熱量は何J?

 

【考え方】

  1. 「分」を「秒」になおす
    $$
    \begin{flalign}
    1 \text{分} &= 60 \text{秒} &\\
    2 \text{分} &= 120 \text{秒} &
    \end{flalign}
    $$
  2. 発熱量公式を使う
    $$\begin{flalign}
    \text{電流による発熱量[J]} &= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} &\\
    30\text{W} \times 120\text{s} &= 3600\text{J} &
    \end{flalign}$$

【答え】3600J

【応用問題】発熱量を求める4ステップ

発熱量の計算は、次の4ステップどおり、確実に計算を進めることがコツです。

電熱線の問題では、公式を使うための情報が不足していることが多く、難問化しやすいからです。

【発熱量計算4ステップ】
  1. 単位の確認と変換:  ジュールの計算では「」を使う
  2. 電流・電圧をそろえる:  オームの法則(V=I×R)を使う
  3. 電力を求める:  電力公式(P=V×I)を使う
  4. 発熱量を求める:  ジュール公式(J=W×s)を使う
\ 電気の知識を総動員/ 発熱量の計算 4step Step.1 単位 s(秒)に直す 1分 = 60秒 Step.2 オームの法則 電流・電圧を計算 V = I × R [V] [A] [Ω] Step.3 ワット 電力を計算 P = V × I [W] [V] [A] Step.4 ジュール 発熱量を計算 発熱量[J] = 電力量[J] = 電力[W]×時間[s]

【例題2】 4Ωの電熱線に電圧8Vを加えた。 このとき、5分間で発生する熱量は何J?

【考え方】

  1. 」になおす
    $$\begin{flalign}
    1\text{分} &= 60\text{s} &\\
    5\text{分} &= 300\text{s} &
    \end{flalign}$$
  2. 電流を求める
    $$\begin{flalign}
    I &= V \div R &\\
    \text{電流 } I &= 8\text{V} \div 4\Omega = 2\text{A} &
    \end{flalign}$$
  3. 電力を求める
    $$\begin{flalign}
    P &= V \times I &\\
    8\text{V} \times 2\text{A} &= 16\text{W} &
    \end{flalign}$$
  4. 熱量を求める
    $$\begin{flalign}
    J &= W \times s &\\
    16\text{W} \times 300\text{s} &= 4800\text{J} &
    \end{flalign}$$

【答え】4800J


発熱量電力量の単位には、ジュール[J]のほかにワット時[Wh]キロワット時[kWh]も使われます。特に家庭での電気料金に関わる問題では次の例題がよく出ます。

【例題3】 電気抵抗2.5Ωの電球に2Aの電流を90分間流したときの、電球の電力量Eが何ワット時[Wh]か求めなさい。

【考え方】

  1. 時間[h]になおす
    $$\begin{flalign}
    1\text{h} &= 60\text{分} &\\
    90\text{分} &= 1.5\text{h} &
    \end{flalign}$$
  2. 電圧を求める
    $$\begin{flalign}
    V &= I \times R \text{ 電圧} &\\
    V &= 2\text{A} \times 2.5\Omega = 5\text{V} &
    \end{flalign}$$
  3. 電力を求める
    $$\begin{flalign}
    P &= V \times I &\\
    5\text{V} \times 2\text{A} &= 10\text{W} &
    \end{flalign}$$
  4. 電力量を求める
    $$\begin{flalign}
    \text{Wh} &= \text{W} \times \text{h} &\\
    10\text{W} \times 1.5\text{h} &= 15\text{Wh} &
    \end{flalign}$$

【答え】15Wh

【実験レポート公開】電熱線による発熱実験

この章では、電気エネルギーを熱エネルギーに変える電熱線を用いて、発生する熱量(発熱量)が水温をどのように変化させるかを調べる実験を解説します。

電熱線 水100㎤ 温度計 電源装置 スイッチ 発熱量 電力量 実験画像

電熱線実験の目的は、水温の上昇という目に見える結果から「発熱量電力時間のそれぞれに比例する」という法則を導き出すこと。

$$\begin{flalign}
\text{電力量[J]} &= \text{発熱量[J]} &\\
&= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} &
\end{flalign}$$

電熱線による発熱実験は大きく分けると、次の2パターンの実験があります。

  1. 時間は固定、電圧を変える: →発熱量が電力に比例することを確かめる
  2. 電圧は固定、時間を変える: →発熱量が時間に比例することを確かめる

この実験では、電熱線で使われた電気エネルギーは、すべて水温の上昇に使われるものとします。

【実験A】時間は固定、電圧を変える

1.目的

電熱線の発熱量が電力にどのように関係するかを調べる。

2.方法

  1. くみ置きの水100cm³をビーカーにとり、水温を測定する
  2. 電気抵抗が6Ωの電熱線Aを用いて、装置を組み立てる
  3. 電圧を3Vにし、水に2分(120秒)間電流を流した後、水温を測定する
  4. 電流の測定値から電力を計算し、水温の測定値から水の温度上昇を求める
  5. 電圧を6V、9Vに変えて上記3、4をくり返す

3.結果の例と分析

3-1.実験結果にもとづき、電力発熱量を計算し表にまとめる

【計算方法】

$$\begin{flalign}
\text{電力[W]} &= \text{電圧[V]} \times \text{電流[A]} &\\
\text{発熱量[J]} &= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} &
\end{flalign}$$

【結果の例】

電圧[V]03.06.09.0
電流[A]00.51.01.5
電力[W]01.56.013.5
時間[s]120120120120
発熱量[J]01807201620
温度上昇 [℃]00.41.63.6
\ 時間は固定、電圧を変える/ 電熱線の発熱量は 電力にどのように関係する? 【固定する条件】 水:100㎤ 電熱線:6Ω 実験時間:2分間 【変える条件】  電圧:3V→6V→9V 電圧[V] 0 3.0 6.0 9.0 電流[A] 0 0.5 1.0 1.5 電力[W] 0 1.5 6.0 13.5 時間[s] 120 120 120 120 電力量[J] 0 180 720 1620 温度上昇[℃] 0 0.4 1.6 3.6
3-2.グラフをつくる

温度上昇[℃]電力[W]のグラフは次のとおりです。

電熱線による発熱実験 水100㎤の温度上昇[℃]-電力[W]グラフ

温度上昇[℃]発熱量(電力量)[J]のグラフは次のとおりです。

電熱線による発熱実験 水100㎤の温度上昇[℃]-発熱量(電力量)[J]グラフ

4.考察

4-1. 比例関係の確認

グラフを観察すると、電力と温度上昇の関係は原点を通る直線です。

表から電力温度上昇の比率を比較します。

 3V→6V6V→9V
温度上昇[℃]

0.4→1.6 =4倍

1.6→3.6 =2.25倍

発熱量[J]

180→720 =4倍

720→1620 =2.25倍

電力[W]1.5→6 =4倍

6→13.5 =2.25倍

電圧[V]

3→6 =2倍

6→9 =1.5倍

4-2.グラフと表の考察
  1. 水温の上昇は、電流による発熱量に比例する
  2. 水温の上昇は、電力に比例する
  3. 電流による発熱量は、電力に比例する
電圧[V] 3.0 6.0 9.0 電力[W] 1.5 6.0 13.5 発熱量[J] 180 720 1620 上昇温度[℃] 0.4 1.6 3.6 水温の上昇は、電流による発熱量に比例する 水温の上昇は、電力に比例する 電流による発熱量は、電力に比例する 原点を通る直線

※水温の上昇は電圧の2乗に比例する:P=V×I=V×V×I

5.振り返り例

この実験の振り返りの例は、次のとおりです。参考にしてください。

  • 実験の結果をグラフで見たら、温度上昇と電力が直線になっていて驚いた。やっぱり電熱線が熱くなるのは、電力で決まるんだとハッキリわかった

  • 実験前に「電流の大きさ」や「抵抗の大きさ」も関係すると思ったけど、今回は電力についてのみをまとめた。仮に、電流だけを何倍かにしたら、温度はちゃんと何倍になるのかを、一度実験で確かめてみたい

  • 今回は電力しか実験してないから、もし水の量を変えたらどうなるかとか、本当に発熱量を決める原因がほかにもあるんじゃないか気になる

  • 今回の実験で、電熱線がどれくらい熱くなるかが、使った電力で決まることがわかって、すごくスッキリした

【実験B】電圧は固定、時間を変える

1.目的

電熱線の発熱量が、電流を流した時間にどのように関係するかを調べる。

2.方法

  1. くみ置きの水100cm³をビーカーにとり、水温を測定する
  2. 電気抵抗が6Ωの電熱線Aを用いて、装置を組み立てる
  3. 電圧を6Vに固定し、電流を測定する
  4. 2分ごとの水温を、8分間測定する
  5. 電流の測定値から電力を、水温の測定値から水の温度上昇を求める
  6. 電熱線をB(4.0Ω)C(2.0Ω)に変えて上記3~5をくり返す

3.結果の例と分析

3-1.実験結果にもとづき、電力と発熱量を計算し表にまとめる

【計算方法】

  • 電力[W]=電圧[V]×電流[A]
  • 発熱量[J]=電力[W]×時間[s]

【結果の例】

電熱線A(6Ω)の結果

時間[分]02468
時間[s]0120240360480
電圧[V]66666
電流[A]11111
電力[W]66666
発熱量[J]0720144021602880
温度上昇 [℃]01.63.24.86.4
\ 電圧は固定、時間を変える/ 電熱線の発熱量は 時間にどのように関係する? 【固定する条件】 水:100㎤ 電圧:6Ⅴ 電熱線A:6Ω 【変える条件】  2分ごと計8分間測定 【結果】 時間[分] 0 2 4 6 8 時間[s] 0 120 240 360 480 電圧[V] 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 電流[A] 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 電力[W] 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 発熱量[J] 0 720 1440 2160 2880 温度上昇[℃] 0 1.6 3.2 4.8 6.4

電熱線B(4Ω)の結果

時間[分]02468
時間[s]0120240360480
電圧[V]66666
電流[A]1.51.51.51.51.5
電力[W]99999
発熱量[J]01080216032404320
温度上昇 [℃]02.44.87.29.6
\ 電圧は固定、時間を変える/ 電熱線の発熱量は 時間にどのように関係する? 【固定する条件】 水:100㎤ 電圧:6Ⅴ 電熱線B:4Ω 【変える条件】  2分ごと計8分間測定 【結果】 時間[分] 0 2 4 6 8 時間[s] 0 120 240 360 480 電圧[V] 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 電流[A] 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 電力[W] 9.0 9.0 9.0 9.0 9.0 発熱量[J] 0 1080 2160 3240 4320 温度上昇[℃] 0 2.4 4.8 7.2 9.6

 

電熱線C(2Ω)の結果

時間[分]02468
時間[s]0120240360480
電圧[V]66666
電流[A]33333
電力[W]1818181818
発熱量[J]02160432064808640
温度上昇 [℃]04.89.614.419.2
\ 電圧は固定、時間を変える/ 電熱線の発熱量は 時間にどのように関係する? 【固定する条件】 水:100㎤ 電圧:6Ⅴ 電熱線C:2Ω 【変える条件】  2分ごと計8分間測定 【結果】 時間[分] 0 2 4 6 8 時間[s] 0 120 240 360 480 電圧[V] 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 電流[A] 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 電力[W] 18.0 18.0 18.0 18.0 18.0 発熱量[J] 0 2160 4320 6480 8640 温度上昇[℃] 0 4.8 9.6 14.4 19.2

3-2.グラフをつくる
電熱線による発熱実験 水100㎤の温度上昇[℃]-電流を流した時間[分]グラフ

3つの電熱線のグラフを観察すると、電熱線の温度上昇と時間の関係は原点を通る直線です。

4.考察

4-1. 比例関係の確認

グラフを観察すると、電流を流した時間温度上昇の関係は、原点を通る直線です。

表から時間温度上昇の比率を比較します。

 電熱線A:2分→4分電熱線B:2分→8分
温度上昇[℃]1.6→3.2 =2倍2.4→9.6 =4倍
電力量[J] (発熱量[J])720→1440 =2倍1080→4320 =4倍
4-2.グラフと表の考察
  • 水温の上昇は、電流による発熱量に比例する
  • 水温の上昇は、電流を流した時間比例する
  • 電熱線の発熱量は、電流を流した時間比例する
"電熱線A 2分→4分 " "電熱線B 2分→6分 " "電熱線C 2分→8分 " 発熱量[J] 720→1440 1080→3240 2160→8640 上昇温度[℃] 1.6→3.2 2.4→7.2 4.8→19.2 水温の上昇は、電流による発熱量に比例する 水温の上昇は、電流を流した時間に比例する 電流による発熱量は、          電流を流した時間に比例する 原点を通る直線

4-3.6分後電力[W]上昇温度[℃]についてまとめる
 電熱線A電熱線B電熱線C
電気抵抗[Ω]642
電力[W]6918
上昇温度[℃]4.87.214.4
電熱線による発熱実験 水100㎤の温度上昇[℃]-電力[W]グラフ

さらに、電力[W]温度上昇[℃]の比率を比較します。

 電熱線A→B電熱線A→C
電力[W]6→9 =1.5倍6→18 =3倍
温度上昇[℃]4.8→7.2 =1.5倍4.8→14.4 =3倍
\ 電圧&時間を固定、電熱線を変える / 電圧6Ⅴを電熱線A、B、Cに与えたときの 電力 と 水100㎤の6分後の上昇温度の関係 電熱線A 電熱線B 電熱線C 電気抵抗[Ω] 6.0 4.0 2.0 電力[W] 6.0 9.0 18.0 上昇温度[℃] 4.8 7.2 14.4 水温の上昇は、電力に比例する 原点を通る直線

実験Bにおいて、時間を一定にした場合水温の上昇電力比例するという結論を得られます。

5.振り返り例

  • 今回の実験で、電熱線の発熱量と電流を流した時間の関係が比例だと、データでハッキリわかった

  • グラフが原点を通る直線になったから、時間を2倍にしたら、温度上昇もちゃんと2倍になることがわかって、すごくスッキリした

  • 実験の結果をグラフと表から分析して、電熱線から出る熱量は、電流を流す時間でコントロールできることがわかった。時間が長ければ長いほど、比例して熱量が増えることを確かめられた

  • 今回は電圧6Vに固定して時間を変えたけど、もし電圧を3Vに変えたら、電熱線の発熱量はどうなるんだろう?時間のほかに、電圧や電流の強さも関係するのかを、これからしっかり調べてみたい

実験Aと実験Bの総合考察

異なる手順をとった2つの実験を比較します。

実験Aの考察

  • 水温の上昇は、電力比例する
  • 電流による発熱量は、電力比例する

実験Bの考察

  • 水温の上昇電流を流した時間比例する
  • 電熱線の発熱量電流を流した時間比例する
  • 水温の上昇は、電力比例する

実験AとBの結果を総合すると、電熱線から発生する発熱量は、電力と時間の両方に比例するという結論が導かれます。

$$\begin{flalign}
\text{発熱量[J]} &= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} &
\end{flalign}$$

【発展】カロリー計算とジュール

チップポテトス こ~いお味 カロリー表示のイメージ画像

実験では発熱量ジュール)を出すために電力や時間などを測定するのですが、実は、水の情報だけでおおよその結果を予測できます。

けい先生
けい先生
計算に使うのは、食べ物などでお馴染みのカロリーです!

この章では、水100gを電気で加熱したときの発熱量カロリーから求め、電力量と結びつける方法を解説します。

カロリーcalとは|水を用いた熱量の単位

カロリーcalは、熱量の単位の1つです。

カロリー公式
  • 発生した熱がすべて水の温度上昇に使われるとき、水1g1℃上昇させるのに必要な熱量が1calカロリー
  • 水が得た熱量[cal] = 水の質量[g] × 上昇温度[℃]
  • 1kcal = 1000cal

水が得た熱量を求めるためには、電熱線に流した電力や時間といった電気的な測定値は必要ありません。

水の質量温度変化さえわかれば、熱量cal)を計算できるのがカロリーの大きな特徴です。

カロリーとジュールの関係|1cal=4.2J

熱量の単位は、理科ではジュールが主流ですが、日常では主にカロリーキロカロリー)を目にしますね。

カロリージュールは、どちらも熱量を表す単位なので、次のように結びつけられます。

$$\begin{flalign}
1 \text{cal} &= \text{約} 4.2\text{J} &\\
※\text{厳密には} 1\text{cal} &= 4.184\text{J} &
\end{flalign}$$

上記の関係を利用すると、水の温度上昇から計算したカロリーを、実験で求めたジュールに置き換えられます。

$$\begin{flalign}
\text{水が得た熱量[J]} &= 4.2 \times \text{水の質量[g]} \times \text{上昇温度[℃]} &
\end{flalign}$$

熱量のカロリー公式 水が得た熱量 = 水の質量 ✕ 上昇温度 [cal] [g] [℃] 1 cal=約4.2Jなので 水が得た熱量 = 4.2 ✕ 水の質量 ✕ 上昇温度   [J] [g] [℃]

【エネルギーの結びつき】

「電流による発熱量がすべて、水が得た熱量となる」という条件(エネルギー保存の法則)がある場合、次の2式を結びつけられます。

  1. 水が得た熱量[J]=4.2×水の質量[g]×上昇温度[℃]
  2. 電流による発熱量[J]=電力[W]×時間[s]

発熱量水が得た熱量は同じものなので、次の式が成り立ちます。

$$\begin{flalign}
4.2 \times \text{水の質量[g]} \times \text{上昇温度[℃]} &= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} &
\end{flalign}$$

【例題で演習】カロリーとジュールの計算

【例題1】

100gの水を1時間かけて電熱線で15℃上昇させた。電熱線から発生した熱量すべて水の温度上昇に使われるとし、1calは4.2Jとする。

【例題1-1】

電熱線の発熱量は何J?

【考え方】

水の質量100gと温度上昇15℃が分かっているため、次の公式をつかいます。

$$\begin{flalign} \text{水が得た熱量[J]} &= 4.2 \times \text{水の質量[g]} \times \text{上昇温度[℃]} &\\ &= 4.2 \times 100 \times 15 &\\ &= 6300\text{J} & \end{flalign}$$

    【答え】6300J


    【例1-2】

    電熱線の電力は何W?

    【考え方】

    電熱線から発生した熱量(発熱量)を、例題1で求めたため、次の公式をつかいます。

    • 電流による発熱量Q =電力P×時間t
    • 変形するとP=Q÷t

    時間tには秒(s)を用いるため

    • 1時間 = 3600s

    発熱量6300J、時間3600sをP=Q÷tに代入し

    $$\begin{flalign}
    6300 \div 3600 &= 1.75\text{W} &
    \end{flalign}$$

    【答え】1.75W

    【FAQ】発熱量のよくある質問

    Q1.結局、発熱量と電力量は同じってこと?

    はい、中学理科では発熱量と電力量は同じと考えて問題ありません。

    • 電力量は「電熱線がつかった電気エネルギーの量」で、単位はジュールJ
    • 発熱量は「電気エネルギーが熱エネルギーに変わって放出された量」で、単位はジュールJ

    中学理科では「電熱線から発生した熱量はすべて水の温度上昇に使われる」という条件が必ずあります。

    消費した電力量と発生した発熱量が等しくなるため、次の公式にまとめられます。

    $$\begin{flalign} \text{電力量[J]} &= \text{発熱量[J]} &\\ &= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} & \end{flalign}$$

    実際には、一部のエネルギーが熱以外の音や光に変わったり、水以外のもの(容器など)を温めるために使われるため、厳密には100%の一致はしません。

    Q2.電圧を2倍にすると、発熱量が4倍になるのはなぜ?

    発熱量が電圧の2乗に比例するからです。

    発熱量公式は次のように変形できます。

    $$\begin{flalign}
    \text{発熱量[J]} &= \text{電圧[V]} \times \text{電圧[V]} \div \text{抵抗[Ω]} \times \text{時間[s]} &
    \end{flalign}$$

    上の式より、電圧を2倍にすると発熱量は2の2乗の4倍、電圧を3倍にすると発熱量は3の2乗の9倍になるからです。


    【公式変形のしかた】

    次の3つの公式を組み合わせます。

    • 発熱量公式 発熱量[J] = 電力[W] × 時間[s]…①
    • 電力公式 電力[W] = 電圧[V] × 電流[A]…②
    • オームの法則 電流[A] = 電圧[V] ÷ 抵抗[Ω]…③

    公式①と②より

    $$\begin{flalign}
    \text{発熱量[J]} &= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} &\\
    &= \text{電圧[V]} \times \text{電流[A]} \times \text{時間[s]} &
    \end{flalign}$$

    公式③を入れる

    $$\begin{flalign}
    \text{発熱量[J]} &= \text{電圧[V]} \times \text{電圧[V]} \div \text{抵抗[Ω]} \times \text{時間[s]} &
    \end{flalign}$$

    Q3.抵抗を大きくすると、発熱量はどうなるの?

    電圧が一定の場合、抵抗を大きくすると発熱量は小さくなります。

    Q2で変形した発熱量公式を使います。

    $$\begin{flalign}
    \text{発熱量[J]} &= \text{電圧[V]} \times \text{電圧[V]} \div \text{抵抗[Ω]} \times \text{時間[s]} &
    \end{flalign}$$

    抵抗を大きくするほど、発熱量は反比例して小さくなります


    電流を一定にすると、抵抗を大きくすると発熱量は大きくなります。

    発熱量の公式を変形し、電流が一定の場合の公式を確認してみましょう。

    発熱量公式より

    $$\begin{flalign}
    \text{発熱量[J]} &= \text{電力[W]} \times \text{時間[s]} &
    \end{flalign}$$

    電力公式を入れる

    $$\begin{flalign}
    \text{発熱量[J]} &= \text{電圧[V]} \times \text{電流[A]} \times \text{時間[s]} &
    \end{flalign}$$

    オームの法則:電圧[V]=電流[A]×抵抗[Ω]より

    $$\begin{flalign}
    \text{発熱量[J]} &= \text{電流[A]} \times \text{抵抗[Ω]} \times \text{電流[A]} \times \text{時間[s]} &\\
    &= \text{電流[A]} \times \text{電流[A]} \times \text{抵抗[Ω]} \times \text{時間[s]} &
    \end{flalign}$$

    抵抗比例して、発熱量が大きくなるのです。



    抵抗と発熱量:まとめ

    • 電圧(V)が一定:発熱量(J)は抵抗(Ω)に反比例
    • 電流(A)が一定:発熱量(J)は抵抗(Ω)に比例

    Q4.そもそもエネルギーって何?

    エネルギーとは「何かを動かしたり、物質の状態を変化させたりする能力」のことです。

    すべての現象は、エネルギーが形を変えたり移動したりすることで起きています。

    【電熱線とエネルギーの関係】

    電熱線による発熱実験では、エネルギーの変換が起きています。

    • 電気エネルギー:電気が流れることで、さまざまな現象を起こすことができる能力
    • 熱エネルギー:電熱線が発熱し、水を温めることができる能力

    電熱線が使った電気エネルギーの総量が、そのまま熱エネルギーの総量に変わっている(エネルギー保存の法則)と考えるのが、中学理科での基本的な考え方です。

    Q5.「カロリー」って人名?

    「カロリー(cal)」は人名ではありません。

    ラテン語で「熱」を意味するcalor(カロル)という言葉に由来しています。

    ちなみに、「ジュール(J)」や「ワット(W)」は科学者の名前(ジェームズ・ジュール、ジェームズ・ワット)に由来するため大文字で表記されますが、calは人名ではないため小文字なのです。

    Q6.食品の「kcal」はどうやって算出したの?

    電熱線実験による水の発熱実験と原理は同じです。

    食品のサンプルを密閉容器(ボンブ熱量計、カロリーメーター)に入れ、完全に燃やします。

    発生した熱を、周りに入れた水に吸収させ、水の温度上昇を測ります。

    水の質量温度上昇から、食品が持つ化学エネルギーを熱量(kcal)として計算できるのです。

    【まとめノート配布!】発熱量計算のポイント

    この記事では、電熱線による発熱のしくみから、計算方法、カロリーとの関係までを徹底的に解説しました。

    発熱量計算をマスターするための最重要ポイントを確認しましょう。

    発熱量計算の最重要ポイント

    【考え方】

    • 電熱線が消費した電力量(電気エネルギー)は、全て発熱量(熱エネルギー)に変わる
    • 電力量発熱量も単位はジュールJ

    【公式】

    • 発熱量[J] = 電力量[J] = 電力[W] × 時間[s]
    • ジュールの計算では時間は秒[s]に直す

    電熱線の実験で絶対におさえたいポイントは次のとおりです。

    時間を固定して行う実験

    • 変えるのは電圧
    • 水温の上昇は電力比例
    • 発熱量は電力に比例

    電圧を固定して行う実験

    • 変えるのは時間
    • 水温の上昇は時間比例
    • 発熱量は時間に比例

    実験の総合的な結論

    • 水温の上昇は、電力時間比例
    • 発熱量は、電力時間比例

    電熱線の実験において大切な公式

    $$\begin{flalign}
    \text{電力[W]} &= \text{電圧[V]} \times \text{電流[A]} &
    \end{flalign}$$


    けい先生
    けい先生
    皆さんのよりよい学習のためにまとめノートをつくりました!

    電熱線や発熱量については、下のノート図を参考にしましょう。 【電流による発熱量まとめ】 ・熱 … 物体の温度を変化させる原因となるもの ・熱量 … 熱の量。単位;J[ジュール] ・電熱線…電流により熱量を発生させる器具。 発生した熱の量を発熱量という。      →電気エネルギー が すべて 熱エネルギーに   かわったとすると、電力量 = 発熱量なので  電力量 = 電流による発熱量 = 電力 × 時間  E[J]   Q[J] P[W] t[s] 例 2Ωの電熱線に電圧8Vを加えた。 (1)電熱線に流れる電流は何A?  8V ÷ 2Ω = 4A          (答)4A (2)電熱線が消費する電力は何W?  8V × 4A = 32 W         (答)32 W (3)電熱線に5分電流を流すと発生する熱量は何J?  5分 = 300 s  32 W × 300 s = 9600J        (答)9600J 電熱線の実験まとめノート図は次のとおり。

    【電熱線による水温の変化を調べる実験Ⅰ】 電熱線 から 水 への 熱 の移動が 確かめられる ※電熱線A;6.0Ω、電熱線B;4.0Ω、電熱線C;2.0Ω ⅰ)電熱線Aに2分間、電流を流す。   電圧を3.0V、6.0V、9.0Vと変えて温度測定。 電圧Ⅴ[V] 0 3.0 6.0 9.0 電流Ⅰ[A] 0 0.5 1.0 1.5 電力P[W] 0 1.5 6.0 13.5 P=V×I  温度上昇[℃] 0 0.4 1.6 3.6    考察〕      水温の上昇は、    電力 に比例する 電流による発熱量Q[J]=P[W]×時間t[s]より  3Vのとき … 1.5 W × 120s = 180J  6Vのとき … 6.0W × 120s = 720J  9vのとき … 13.5W × 120s = 1620J 【電熱線による水温の変化を調べる実験Ⅱ】 ⅱ)同じ電圧6.0Vで温度測定    時間[分] 0 2 4 6 8  温度  電熱線A 0 1.6 3.2 4.8 6.4  上昇  電熱線B 0 2.4 4.8 7.2 9.6  [℃]  電熱線C 0 4.8 9.6 14.4 19.2 考察〕  水温の上昇は 電流を流した時間 に比例する ⅲ)実験ⅱの6分後の電力と上昇温度についてまとめる  電圧6V  C  B A 電気抵抗(Ω) 2.0 4.0 6.0 電力(W)  18.0 9.0 6.0 上昇温度(℃) 14.4 7.2 4.8  ※電力P=V×I=V×V÷R 結論〕  水温の上昇は、電力 と 電流を流した時間 の  それぞれに比例する。

    発展的な内容ですが、カロリーについてもまとめたいという理科好きな方は、次のノート図を参考にしてください。

    【カロリー】 ・発生した熱が すべて水の温度上昇に使われるとき  水1gを1℃上げるのに必要な熱量は1calである。                  [カロリー]    水が得た熱量 = 水の質量 × 上昇温度      [cal]     [g]    [℃]  →1 cal = 約4.2Jなので、   ※詳しくは4.184J   水が得た熱量 = 4.2 × 水の質量 × 上昇温度     [J]         [g]    [℃] 例)100gの水を1時間かけて電熱線で15℃上昇させた。   電熱線から発生した熱量はすべて水の温度上昇に   使われるとし、1calは4.2Jとする。 (1)電熱線の発熱量はいくら?  4.2J × 100g × 15℃ = 6300J   (答)6300J (2)電熱線の電力はいくら?  1時間 = 3600s  電力量E=電流による発熱量Q =電力P×時間tより  P=Q÷t だから  6300J ÷ 3600s = 1.75W   (答)1.75W

    オームの法則からワット・ジュールの法則について復習したい方は次の記事が参考になります。

    【中2理科】オームの法則完全攻略!電流A,電圧V,電力W,電力量J計算のコツを分かりやすく解説

    そもそも「電気回路って何?」という方は、下の記事がおすすめです。

    【中2理科】直列・並列回路の法則を分かりやすく!電流I,電圧V,抵抗Rの計算法を現役教師が徹底図解

    けい先生
    けい先生
    皆さんの理科の学習のお役に立てれば幸いです

    ABOUT ME
    けい先生
    中学校・高校の理科教員。某公立大理学部物理科学科卒業。大手進学塾で集団授業の講師、模試や問題集の作成会社とフリー契約経験あり。 ●サイトのビジョン;科学好きなヒトを増やす! ー不治の病をなくしたり、生活を楽にするモノを開発したりする次世代の科学者が一人でも増えますように。
    こちらの記事もおすすめ