そこでこの記事では、中学校に入ってから理科が苦手になりかけている方でも理解できるよう、中1理科の化学分野『物質の区別』のキホンを解説します。
私が17年かけて培ってきた塾講師・教員経験を凝縮しました。効率のよい理科学習をしたい方は、ぜひ最後までお読みください。
物体と物質のちがいとは?「くぎ」は物体、「鉄」は物質
物体と物質は、理科的には別の用語です。ちがいを一言で表すと、次のとおりです。
「くぎ」は物体、「鉄」は物質
本章では上記の意味を、詳しく解説します。
本章で学ぶ内容
- 物体とは何か
- 物質とは何か
物体「つかう目的や形で区別」
例えば、めがねについて考えてみましょう。
めがねはフレームやレンズ、ねじなどの部品を組み合わせてできています。
フレームは、耳にめがねをかける目的があります。
レンズは、四角形や丸い形をしています。
ねじには、各パーツを固定する目的があります。
フレーム、レンズ、ねじは目的や形があるため、すべて「物体」です。
物質「材料でものを区別」
材料でものを区別するときに「物質」をつかいます。
例えば、めがねについて考えてみましょう。
めがねのレンズの材料は、ガラス製のものもあれば、プラスチック製のものもあります。
ガラスやプラスチックなどの材料を「物質」と言います。
有機物と無機物【白い粉末の見分け方】
本章では、砂糖と食塩、かたくり粉の3種類の粉末について学習します。
砂糖・食塩・かたくり粉はどれも白い粉末で、よく観察しないとちがいは分かりません。
そこで本章では、見た目が似ている白い粉末を例に、物質の区別のしかたを解説します。
本章で学べる内容
- 有機物の性質
- 有機物と無機物の例
- 身のまわりの有機物
- 身のまわりの無機物
有機物の性質|中1理科 化学
中学理科で学習する有機物の特徴は次の2つです。
有機物の特徴
- 有機物は、炭素と水素でできている
- 有機物を燃やすと、二酸化炭素と水ができる
有機物は炭素と水素でできている
有機物は、炭素が必ず含まれています。
また、有機物は水素を含んでいる場合が多いです。
有機物を燃やすと、二酸化炭素と水ができる
有機物が燃えると、炭素は二酸化炭素に変化し、水素は水に変化します。
なお、二酸化炭素が発生することは、石灰水が白くにごることで確認できます。
また、水が発生することは、青色の塩化コバルト紙が赤色に変化することで確認できます。
ちなみに、燃えるという現象は、酸素と結びつく化学反応で「燃焼」と言います。
炭素が酸化して、二酸化炭素が生じます。詳しくは中学2年で学習します。
無機物の性質|中1理科 化学
無機物は、有機物以外の物質です。
加熱しても二酸化炭素が発生しません。
【実験】有機物と無機物の区別|謎の物質X
砂糖、かたくり粉、食塩について性質を確かめる実験を行い、有機物と無機物を区別します。
有機物と無機物の区別実験の手順
有機物と無機物の区別実験の手順は次のとおりです。
有機物と無機物の区別実験の手順
- 各物質の水へのとけやすさを観察する
- 各物質を加熱し、変化のようすを観察する
- 火がついたら、石灰水の入った集気びんに燃焼さじごと入れる
- 集気びんにふたをして、石灰水をよく振る
有機物と無機物の区別実験の結果
有機物と無機物の区別実験の結果は次のとおりです。
有機物と無機物の区別実験の結果
【水へのとけやすさ】
- 砂糖、食塩:とける
- かたくり粉:とけにくい
【加熱時のようす】
- 砂糖、かたくり粉:燃える、集気びんの内側がくもる
- 食塩:燃えない
【石灰水の変化】
- 砂糖、かたくり粉:白くにごる
- 食塩:実験しない
有機物と無機物の区別実験の考察
有機物と無機物の区別実験の考察は次のとおりです。
有機物と無機物の区別実験の考察
【有機物と無機物の区別についての考察】
- 砂糖は、有機物である
[理由]石灰水が白くにごるため - かたくり粉は、有機物である
[理由]石灰水が白くにごるため - 食塩は、無機物である
[理由]燃えないから
【発生する物質についての考察】
- 石灰水が白くにごることから、砂糖とかたくり粉は、燃えると二酸化炭素を発生することが分かる
- 集気びんの内側がくもることから、砂糖とかたくり粉は、燃えると水を発生することが分かる
【砂糖とかたくり粉の区別についての考察】
- 砂糖とかたくり粉はどちらも有機物だが、水のとけやすさは異なる
砂糖は水にとけやすいが、かたくり粉は水にとけにくい
身のまわりの有機物
身のまわりにある有機物には、次のようなものがあります。
身のまわりの有機物
- 砂糖
- かたくり粉
- 木
- ろう
- 紙
- エタノール
- プラスチック
- ゴム
有機物は、炭素と水素を含む物質ですが、例外的に炭素と二酸化炭素は無機物であることを覚えておきましょう。
身のまわりの無機物
身のまわりにある無機物には、次のようなものがあります。
身のまわりの無機物
- スチールウール(鉄)
- 金属
- 食塩
- 炭素
- 二酸化炭素
金属と非金属|中1理科 化学
本章では、次の内容を解説します。
本章で学べる内容
- 金属共通の性質
- 金属と磁石の関係
- 金属と非金属の違い
金属共通の性質|中1理科 化学
すべての金属に共通する性質は次の5つです。
金属の共通性質5点
- 金属光沢がある
- 電気をよく通す【電気伝導性】
- 熱をよく伝える【熱伝導性】
- 引っぱると細く伸びる【延性】
- たたくと伸びてうすく広がる【展性】
詳しく解説します。
【金属の性質1】金属光沢がある
金属には、みがくと光る性質があります。金属特有の光沢を「金属光沢」と言います。
鏡のようにみがかれているスプーンは、金属光沢をもっていると言えます。
中学理科では、薬さじでこすって光沢が出るかを確かめる実験が多いです。
【金属の性質2】電気をよく通す▼電気伝導性
金属は、電気をよく通します。電気をよく通す性質を「電気伝導性」と言います。
中学理科では、乾電池と豆電球で回路をつくり、豆電球が光るかを確かめる実験が多いです。
【金属の性質3】熱をよく伝える▼熱伝導性
金属は、熱をよく伝えます。熱をよく伝える性質を「熱伝導性」と言います。
金属は熱伝導性が高いため、フライパンや鍋などの調理器具には金属が用いられています。
【金属の性質4】引っぱると細く伸びる▼延性
金属は、引っ張ると細く伸びる「延性」という性質を持っています。
針金や送電線のワイヤーなどは、延性を利用してつくられた細長い金属です。
【金属の性質5】たたくと伸びてうすく広がる▼展性
金属はたたくと伸びて、うすく広がる「展性」という性質を持っています。
アルミホイルや金箔などは、展性を利用してつくられています。
【よくある質問】すべての金属が磁石につく?
結論、すべての金属が磁石につくことはありません。
磁石がつくのは、鉄やニッケル、コバルトなど、一部の金属だけです。
アルミ缶はアルミニウムでできており、磁石につきません。
スチール缶は鉄でできているため、磁石につきます。
すべての金属が磁石につく訳ではないのです。
【非金属とは?】金属と非金属の違い
非金属は、金属以外の物質です。
ガラスやプラスチック、木などが非金属です。
物質の密度による区別|中1理科 化学
物質は、密度によって区別できます。
本章では、密度について、次の内容を解説します。
本章で学べる内容
- いろいろな物質の密度
- 【密度の求め方】密度=質量÷体積
- 【密度と浮き沈みの関係】大きいと沈む
密度の計算について、下の記事では本記事より詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
いろいろな物質の密度
いろいろな物質の密度は、次のとおりです。
いろいろな物質の密度
- 金 : 19.3 g/cm³
- 銀 : 10.50 g/cm³
- 銅 : 8.93 g/cm³
- 鉄 : 7.86 g/cm³
- 亜鉛 : 7.12 g/cm³
- アルミニウム: 2.69 g/cm³
- 鉛 : 11.34 g/cm³
- 水(4℃) : 1.00 g/cm³
- 氷(0℃) : 0.92 g/cm³
- ポリエチレン: 0.90 g/cm³
そもそも密度とは、物質の体積1cm³あたりの質量(g)です。
簡単にいえば、同じ大きさの物質がどれくらい重いかを表すものが、密度です。
例えば、同じ大きさの箱にティッシュペーパーと鉄の塊を入れたら、どちらが重たいでしょう。
もちろん、鉄の塊の方が重いですね。
同じ大きさの箱でも、物質の種類が違えば質量が違います。
密度の求め方|密度=質量÷体積
物質の体積1cm³あたりの質量(g)を、密度といいます。
密度の単位は、g/cm³です。g/cm³はグラム毎立方センチメートルと読みます。
なお、gはグラムと読み、cm³は立方センチメートルと読みます。
「/(スラッシュ)」は「毎(まい)」と読み、数学における「÷(割る)」と同じ意味です。
密度を求める公式は次のとおりです。
密度(g/cm³)=質量(g)÷ 体積(cm³)
63.0(g)÷ 6.0(cm³)=10.5(g/cm³)
(答え)10.5 g/cm³
密度と浮き沈みの関係|大きいと沈む
密度と浮き沈みの関係は、次のとおりです。
密度と浮き沈み
- 密度が大きいものは沈む
- 密度が小さいものは浮く
例題として、水と氷の関係について考えてみましょう。
水の密度は1.0 g/cm³で、氷の密度は0.9 g/cm³です。
氷の密度は、水に比べて小さいため、氷を水に入れると氷が浮きます。
実験器具の使い方|中1理科 化学
物質を区別するときにつかう、3つの実験器具を解説します。
物質を区別するときに用いる実験器具
- ガスバーナー
- てんびん(上皿てんびん、電子てんびん)
- メスシリンダー
ガスバーナー|燃やして有機物を区別
物質を燃やして、二酸化炭素や水が発生するか確認すると、有機物と無機物を区別できます。
中学理科において、物質を燃やすときにガスバーナーをつかいます。
ガスバーナーにおいて、次の2つの点をしっかり理解しましょう。
- ガスバーナーの部品
- ガスバーナーの火をつける/消す手順
下の記事では、本記事よりも詳しくガスバーナーを解説しているので参考にしてください。
ガスバーナーの部品
ガスバーナーの部品のうち、名前を覚えてほしい部品は次の4つです。
ガスバーナーの部品名
- ガス調節ねじ
- 空気調節ねじ
- コック
- 元栓
ガスバーナーの調節ねじを回す向きは、次のとおりです。
ガスバーナーの調節ねじを回す向き
上から見て
- 時計回りならしめる
- 反時計回りならゆるめる
ガスバーナーの火をつける/消す手順
ガスバーナーの火をつける手順は、次のとおりです。
ガスバーナーの火をつける手順
- 2つのねじが軽くしまっていることを確かめる
- 元栓をあける
- コックをあける
- マッチに火をつけて、ななめ下から近づける
- ガス調節ねじをゆるめて点火する
- ガス調節ねじを回して、炎の大きさを調節する。※目安;10 cm
- ガス調節ねじを動かさないようにして、空気調節ねじをゆるめ、青色で三角形の炎にする
ガスバーナーの火を消す手順は、次のとおりです。
ガスバーナーの火を消す手順
- 空気調節ねじをしめる
- ガス調節ねじをしめる
- コックをとじる
- 元栓をとじる
ガスバーナーについて、下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
上皿てんびんと電子てんびん|質量で物質を区別
物質の質量は、密度を求めるために必要で、密度が分かれば物質を区別できます。
物質の質量は、上皿てんびんや電子てんびんを用いてはかります。
上皿てんびん
上皿てんびんにおける、覚えてほしい部品名は次の3つです。
上皿てんびんの部品名
- 調節ねじ
- 指針(ししん)
- 目盛り板(めもりばん)
上皿てんびんをつかう手順は、次のとおりです。
上皿てんびんをつかう手順
【準備】
- 左右の振れ幅が等しくなるように調節ねじを回す
【薬品のはかりとり】
- 左右両方の皿に薬包紙をのせる
- 一方の皿に分銅(ふんどう)をのせる
※右ききなら左の皿に分銅 - もう一方の皿に薬品を少しずつのせ、つり合わせる
※指針が左右に等しく振れていること
【片付け】
- 一方の皿に重ね、うでがうごかないようにしておく
【注意】
- 安定した水平な台の上に置いてつかう
電子てんびん
電子てんびんをつかう手順は次のとおりです。
電子てんびんをつかう手順
- 薬包紙をのせた後、0点スイッチを押す
→0.00gを示す - 薬品を少しずつ静かにのせ、一定量をはかりとる
メスシリンダー|体積で物質を区別
物質の体積は、密度を求めるために必要で、密度が分かれば物質を区別できます。
物質の体積は、メスシリンダーを用いてはかります。
メスシリンダーを用いると、液体や固体の体積がはかれます。
メスシリンダーで液体をはかる手順は、次のとおりです。
メスシリンダーで液体をはかる手順
- 液面の最も低い位置を、真横から水平に見る
- 最小目盛りの10分の1まで目分量で読みとる
※「10.0」まで読み取るのか「10」まで読み取るのかを意識すること
メスシリンダーで固体をはかる手順は、次のとおりです。
メスシリンダーで固体をはかる手順
- メスシリンダーに水をいれ、目盛りを読む
- メスシリンダーの中に、物質を入れて目盛りを読む
- ふえた体積を求めると、メスシリンダーに入れた物質の体積が分かる
※浮いてしまう物体は、細い針金などで物体を押して、水に沈めてから体積をはかる
まとめノートに整理して、物質を区別しよう
中学1年で学習する物質の区別について解説しました。
物体と物質のちがいをざっくり表すと、下のとおり。
「くぎ」は物体、「鉄」は物質
物体と物質、金属と非金属について整理したまとめノートを参考にしてください(下画像)。
金属の5つの性質をしっかり覚えておきましょう。
金属の5つの性質
- 電気伝導性
- 熱伝導性
- 金属光沢
- 展性
- 延性
物質を区別するとき、有機物と無機物で区別する考え方についても解説しました(下のノート画像)。
有機物の性質として、理解してほしい2つのポイントがあります。
有機物の性質
- 有機物は炭素と水素でできている
- 有機物を燃やすと、二酸化炭素と水ができる
砂糖と食塩、かたくり粉の燃焼実験については、下のノートが参考になります。
密度の求め方は、下のノートのようにまとめるといいでしょう。
密度のポイントは次の3点です。
密度とは
- 密度(g/cm³)=質量(g)÷体積(cm³)
- 密度が大きいと沈む
- 密度が小さいと浮く
物質を区別するために必要な実験器具として、次の3つもノートにまとめることで、整理された学習ができます。
覚えてほしい実験器具
- ガスバーナー
- てんびん(上皿てんびんと電子てんびん)
- メスシリンダー
ガスバーナーのノートは下のとおりです。
質量をはかるためのてんびんは、下のノートを参考にしてください。
体積をはかるメスシリンダーは、下のように整理すると、理解しやすいです。
以上、中学1年化学分野「物体と物質」の解説でした。
密度の具体的な計算のしかたは、下の記事で詳しく解説しています。
ガスバーナーについては、下の記事で詳しく解説しています。
有機物の燃焼(中2)については、下の記事を参考にしてください。